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夏の自堕落ミス

   夏バテ続きではあるが、菓子やメシ作りに関しては普通に出来ているから問題はない。  素麺か蕎麦かといったら蕎麦を取る俺はそれさえあればしばらくは生きていけるとわかった。  陽が燦々とふりそそがれると動かなくても疲れが溜まるのはどうしてだろうな?  こういう時、趣味があってよかったと思うが、なくなるものもあるわけで。お菓子なんてまず砂糖や牛乳をはじめにたまごもなきゃ作れない。  ゲームソフトはだいたいのものが決まってるけど新しいのだって欲しい。だけど、買いに行くのはめんどくさい。  最終的にはなにもせずにぐったりとソファーなりベッドなり寝転がって時間が来るのを待つ、そんな日の繰り返しだ。  暑ささえなければ体は持て余してんだから、どこかに行ってたかもしれない。 「クーラーついてても暑いと感じる今年の日本はおかしい……」  平三に会いに行くのも、木下の部屋に行くのも、食堂に行くのも、全部暑さからくるダルさで面倒になり、ダウンしていた。  それなのにあのバカは、 「智志君、風邪引くよ?」 「……暑ぃな、くっつくな」  俺の自室に入ってきてはベッドにうつ伏せになる背中に覆い被さってきた。  お風呂でも入っていたのか上半身はなにも着ていなくて、シャンプーの匂いが漂う。  ガンガンについているクーラーだが、風呂上がりの人間が覆い被さって来るとその熱に負けて俺自身も熱くなってくる。  それが鬱陶しくて、うなじに顔を埋めていた王司の頭を叩けばその振動が少し伝わってきた。 「ちゅっ、ん……ねぇさとしくん、キスマーク付けてもいい?」 「……どーでも」  そのうなじにリップ音を鳴らしながら唇を軽く押しつけて聞いてきた王司にイラッとしながら答える。たぶん暑さのせいで短気になっているんだろう。 「ふふっ、元気のない智志くんはちょっと寂しいけど、これはこれでイイよねぇ……」  うなじから伝わってきた多少の痛みに反応しなくなったのは慣れてきてしまったせいか、暑さのせいか……暑さのせいがいいなぁ。  しばらくしてると完全にキスマークより噛み跡として残していってるような王司に思わず腕を後ろに回して肘打ちを入れる。 「いたたっ……ちゃんと聞いたのに……」  本当に痛がってるのか、と疑いたくなるぐらいの反応で完全にピキッときた。こっちは背中から伝わる暑さで熱いし、そろそろ重みも感じてきて息苦しい。 「……退けってことだよ、ばーか」  うつ伏せから無理矢理、仰向けになるために俺の背中に乗っている王司をベッドに落とす。壁側に寄ればその壁が冷たく感じ、気持ち良くてしばらく離れたくない。  壁にこんな力が……なんてバカな事を考えていたら、王司は懲りもせず、今度は真正面から抱き着いてきた。 「んだよ、今日のお前しつけぇな」 「智志くん、さとしくんキスしてもいい……?」 「……」  どこでスイッチが入ったんだ……肘打ちか?  それともその前の頭を叩いた時からか?  もしかして、今から入ったものなのか?  思いつくものをあげてみるが、クーラーの音に窓の外で鳴いている多数のセミの声が聞こえてきて煩わしく思えてきた。  どうも俺はおかしい……ある意味、健全なのかもしれないが俺自身になにも不便がなければ王司からのこういった誘いも不愉快なく受け入れるようになっている。  暑さか……これは暑さで頭がヤられてるせいでいいか?  その方が前の“俺”も納得してくれるだろうよ……。  若干の恥と強気と理性がうまれ始めてるってことで。 「王司、うごくなよ?」  だけどそれを実行するあたり、実は俺の隠されたなにかが発動しているのかもしれない。諦めと挑戦の結果、王司の思い通りに動いているような、気がする。  そう思いながら抱き着いてきた王司を離して俺が体に跨るように乗ってみた。  乗ってみて最初に気付いたのは、もうすでに王司のが勃起していたってこと。  期待通りになってよかったな?――王司。 「ふ、ンっ……」  勃っているソコを手で触りながら王司がやりたがっていたキスをしてやると面白いほど体が跳ねあがって反応していた。  こうやって上に乗ってあれこれするのは初めてではない。  回数にして今回が三回目になるわけだがすでに二回目の時で俺が上になっていろいろやってあげたことがある。  三回とはいえ、一晩で数えたら一回以上行ってるからな。  王司に合わせていたら俺も調子に乗って慣れてくるわけだ……こんな俺に父さんと母さんはどう思うか。しかも男相手に、挿れられる側で。 「んぅ、はッ、うぅ……っさとし、くん……」 「勃たせんのはやいぞ?」  舌を絡ませるキスもだいぶ慣れてきた。  ショックを受けていたあの頃が懐かし過ぎて、たまに息するのを忘れるけどな。よだれが出易いこいつもどうかと思うけど。 「んん、だって智志くんが好きで……ぁ、もっと……ッ」  好きが理由になってたらたまったもんじゃない。  なんていう一言は蹴飛ばしてやらない。  

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