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夏の自堕落ミス
「俺も部屋に入った時は暑いなぁって思っていたけど、これも智志君が考えたなにかなのかな?って思って、なにも言わなかったんだけど……」
状況がわかった俺にリモコンを奪い取る王司はピッピッと操作してまた元にあった位置に置いた。
まさか暖房になっていたなんて……死ぬ気かおい。
スーッと徐々に涼しい風が素肌にあたる。王司が操作したおかげで勘違いしていた設定が直ったみたいだ。
そりゃ20度に設定したって猛暑日が続くなかじゃ涼しくなるわけがない。というか暖房の時点で涼しくならねぇよ……。
濡れたタオルで拭いてくれたおかげか体が冷えるはやさも尋常じゃなかったけど。それでも今の体勢を崩したくなくて、目を瞑る。
王司は掛け布団をかけつつ、さっきと同じく俺の腕に頭を置いては捲れたTシャツを直して、またしがみ付いてきて一人喋るだけの空間が出来上がった。
「暑かったけど、さっきのも悪くないよ。暑いなかヤるのって嫌いじゃない。……あ、でも智志君よりは耐久性があるからこう思うだけかも知れないなあ」
あぁ、だから表情からでも伝わるようなオーラを放っていたのか。
「枕で顔を埋められた時は本気で苦しかったな。でもまたそこが良くて……智志くんの匂いをいっぱい吸えて嬉しいのに苦しくて、だけど智志くんの匂いがすぐ目の前にあって、口のナカにも智志くんのモノがあって、ははっ……幸せ過ぎてどうしようかと思った」
男二人が寝れば狭すぎるにもほどがあるベッド。王司の片足は俺の半身に乗っかっている状態だ。
つまりはこいつのチンコが直の肌に触れているということ。
幸いにも勃っていないふにゃったモノに少しばかし押し付けられてるような気もするが。
「そういえば智志くんってやっぱりちょっとドジなところあるよね。トイレで怪我したこともあったし、すごい可愛い。そうだ、今度おれにもお菓子作り教えてくれるかい?一緒に作ったお菓子、食べたいなァ」
最初は普通に喋っていた王司もだんだん耳に近付いてきて、囁くような喋り方になり、最後は吐息を吹きかけるようなフィードアウト。
むず痒いが頭を置かれている腕はそう簡単に動かない。かといってなにも退かすほどでもない、中途半端なものだから困る。
さっきの暑さが嘘かのように涼しくなっている部屋。快適な暮らしって大事だ……。
暑さでヤられた頭にセックスでの疲れ、エアコンが暖房から冷房に切り替わったおかげか、うとうとと眠くなってきた俺。
目を瞑っていた俺に王司は気付いてるのか知らないが、ずっと喋っている。
「……智志くん、大好き……愛してるっ」
――もうこれは告白じゃないか。
――愛してると言ったぞ。
「智志くんも、俺が好き?好きだといいなぁ……こんな俺を、大好きでいてくれたら、いいな……」
要りもしない言葉。不要過ぎる言葉。
ただ、無理もないのかも、しれないが……態度だけじゃなく言葉にして、口にした方が、こいつからしたら安心するもんなんだろうか。
「さとしくん……」
縋るような声に、煩わしさと愛しさに溢れた想いを解消するべく、俺は自由に動かせるもう片方の腕で王司の背中に回し、足も絡めて抱き締めといた。
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