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迷走の確認

   ドMで変態。  こんな組み合わせで付き合える女……って、こいつホモだったわ。  普通に流れで男は女を、女は男を好きになる、普通の流れで話しかけたが、王司はホモだったわ。  最初辺りの確認でホモかどうかと聞いた時、躊躇いながらも頷いてたしな……まぁ男相手でもいいか。  きっとチンコが付いてるか付いてないかの違いで、好きなタイプに性別は関係ないだろうよ。 「……智志君は?」  そこで言われたのは、まだ俺の手で遊ぶように握ってくる王司。 「あー……」  王司の方を見たが、目は俺の手に向いてて視線が合わなかった。 「俺はどうだろうな?環境が環境だったから、そういう意識はした事ないし」 「環境……」  おい、ここに来てまた平三の時と同じ気まずい空気になるのは勘弁だぞ……。木下みたいにどうでも良さそうな感じで流してくれた方が俺的には一番なんだ。  本人が気にしていなければ、それでいいだろ? 「お前はだいたいどんな子が良いのかわかってるだろ?こんな関係になる相手は俺だけじゃなかったはずだ」 「……」  話題を逸らす意味でも、別にどうも思っていないから、こういう事を言ってみた。  だって、それは本当らしいから。  俺とだけしかセックスしたとかない、なんてのは、あり得ない。バリタチキッカケも誘われて、挿れる側で始まったみたいだしな。  が、そこは気にするほどでもないと俺は思っているから言葉にしただけであって……なにもそんな固まらなくてもいいのになぁ。 「……智志君、」  くっつけていた体が離れて、 「……俺のタイプ、というか、」  腰に回っていた腕もなくて、 「……智志君が、好きなんだよ」 ――告白? 「あー……」  よくわかっている、王司の気持ち。 「智志君がいいんだよ。エッチだって智志君の前とは、その……ヤってたけど……俺が好むようなものじゃなくて、あ、あまり、イケなかった……っていうか……」  これは緊張からくる喋り方だろうか。それとも焦ったような喋りなんだろうか。  どちらにせよ王司は俺を想いながら、慎重に言葉を選んだつもりで話してくれているんだ、とわかる。  本当で気にしていないからいいんだけどな。  イケメンで優しくて、紳士的な態度の人間がモテないはずがないんだ。  女からはもちろん、こういった男子校で、それらの恋心を持つような人間が集まったこの場で、男にもモテるんだ。  誘われた流れでヤったみたいだけどな。  だから、もしかしたら生粋のホモではなく、平三みたいに感化されて男にもそういった感情を持てるようになったかもしれないし、ヤったらヤったで良かったから今までの野郎とヤっていたんだろ。  修羅場的なものは見たことなかったし噂にも聞かないから、こいつはちゃんと筋を通して最初から最後まで過ごしていたのかもしれない。  でもそれは、王司からしたら満足していなかったと。  そう言いたいわけか。 「こんな俺を気付かないうちはそれなりに相手を攻めてたけど、なんか違くて……あ、でも気持ち良かった、かな」  素直だなおい。 「でも智志君に気付かされてからヤると全然ダメでっ、イケなかったんだ……でも智志君を想いながら自慰したら、イケちゃってッ」  そこでだんだんと顔を赤く染まらせる王司。  こいつなりの、たぶん、ちゃんとした告白なんだろ。  告白、なんだろうけど、ここでテーブルに置いていたスマホの画面がパッと明るくなり、ロック画面にてメルマガの通知が表示された。  時間も見えて、俯く王司を一瞬、視界から外して目だけを画面に合わせる。……やべぇ、そろそろ断りに行く時間だ。  同時に木下からメールが来て、一部表示された『これから部屋に行く』という文字。……さすがに、やばい。  あいつが今この状況のなか来たらうるさくなるとかの話じゃない。 「智志くん……全部を受け止めてくれるのは、智志くんだけなんだよ……俺、智志くんが本当に大好きっ」  告白……雰囲気的には、きっと合ってる。  ただ俺の心情だけは、どうも違う。  

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