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気持ち告白
学校に向かって寮に戻れた時間は……あー、7分ぐらいだな。
ポケットに入っていた鍵を取り出して掛けたばかりの鍵穴に差し込んだ後、出来るだけ大きな音を立てて開ける。
これでソファーの上で静かに待ってる王司がいれば頭ぐらいは撫でてやるか。
「ふっ、んんン……さとし、くぅん……っ、すす、」
ドアを開けて最初に聞こえてきたのは王司のすすり泣く声。たまにしゃっくりも耳に入って来るから、たぶん俺が出て行ってからずっと泣いていたんだろう。
音を立ててリビングに向かってみるが王司の反応がないあたり泣くのに夢中で俺が帰って来たことに気付いてないのか?
すぐに戻るっつったのに、そこまで泣かなくとも……どこまで不安にさせていたのか。
「おい、おう――じ……」
俺も悪いところがあったんだ。こうなったら気持ちを伝えた後、存分に甘やかしてみよう。
そう、思っていた。
思っていたんだ。
マジで全裸待機してる王司を見るまでは――。
「さとしくんッ!?」
「……」
ソファーの上で正座をしていたわけではなく、その下の床で、全裸で正座をしながら泣いていた王司は俺に気付き、顔を上げる。
俺も俺だけど、王司のモノを見て勃っていないことに安心。
「悪かったって、ちゃんと断ったから」
本当に全裸で待っているとは思わず、若干ドン引きしながら正座する王司に近付き頭を撫でる。……つーか、改めて普通の時のチンコ見てもでけぇ。
俺のケツの穴ってすげぇ……。あれプラス勃起した状態のまま挿れたということにびっくりだ……今さら過ぎるけど。
「智志くん、智志くん遅い!」
「バカ野郎、これでも走った方だ」
ガバッと長い腕に腰を抱き着かれながら、行きの時は木下もいたし歩いたけどな、と嘘を吐いておく。
帰りは少し走ったし、そんな感じも出しておくか。
暑かった外にこの部屋はクーラーがついてて涼し過ぎた。一気に汗が引いたような気がして俺はそのまま王司の前髪をかき分ける。
まだ泣いてんのかよ。
「王司、そろそろ涙引けよ。どんだけ泣いてんだ」
「……智志くん、俺やだよっ」
「なにが」
ぐりぐり、と腹に頭を押し付けてくる王司。
ぎゅうぎゅうに力が入ってる腕に掴むTシャツの袖。シワになるんじゃないかってぐらい、強い。
「離れないでほしい……」
言葉に、吹かずにはいられない。
「ははっ、厄介者につかまったなァ?」
頭を撫でながらそう言うと、王司は何度も首を縦に振りはじめた。
まぁ、自覚はあったんだけど。
「さとしくん……」
やっと落ち着いてきたのか肩を上げて泣いていた声もしゃっくりも目立たなくなってきた。
腕の力は相変わらずだが、そこは別にいいだろ。いちいち俺の名前を連呼するのはどうかと思うが。
「智志くん、んー」
「お前は本当にうるせぇな」
「ンん、んふ、ぅッ……」
撫でていた手を王司の顔をなぞりながら、口のナカに親指を突っ込む。すぐに受け入れてしゃぶってくるこいつを見て本当はまだガキなんじゃないかと思った。
そんなうっとりしたような表情も良いが、もっと違うのも、見たいだろう。
「おーじ、よく全裸で待ってたな」
頷く王司に指の腹を舌に向けて押し込むように動かす。
「ん、ゔぅんッ」
普通に嘔吐きそうな声に変わった。そして眉間にもシワが寄りつつ、目を閉じた王司。
パッとソコを見れば、はやくも半勃ちをしている。
「そんな気分になってきたか?」
ちゅぱちゅぱと音を立たせながら口のナカで指を動かしているからかな。
殴ったせいで切り傷を作られた口端も王司が自分で拭ったのか垂れていた血が目立たなくなっている。ただ傷は見えてるから結構深いんだろうよ。
ちゅっ、と口のナカに含まれていた親指を取り出す。
「あ、さとしくん……」
そりゃもう惜しそうな目で俺を見てきた。
王司のよだれで少し濡れた指を口端になぞって触ってみるとビクッと震えた体。痛いのかもしれない。
ちょっとの罪悪感に俺は触る指もすぐに止まった。
「……痛かったな、王司」
きっと今の俺の顔は情けない顔からまたさらに情けなくなっているだろう。後悔するなら殴らなきゃよかったな。
顔は、周りにバレる。
「智志くん……智志くん、もっとこれからも殴っていいよ、ね?おれ、智志くんに殴られるの、大好きなんだから」
これはもう完全に落ち着いたな。いつも通りの王司が見れている。
勃起しているところが雰囲気に欠けるが、もうここで、いいだろう。
「王司、」
顔を上げて、王司の目と俺の目が絡まる。
この距離からでも、こいつの目の中には俺だけが映っている、とわかるぐらい黒目が大きい。先を期待したような目。
はく、と声にならない口を動かし、腕の力はよりいっそ強く、手も握られている。
どこを拘束されようとも俺は別に、
「……俺はお前が、好きだよ」
お前から離れようとは思わない。
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