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夢なんじゃないかと思った/白編

  「はぁ、はッ……智志くん、さとしく、うぅ……!」  なに泣いてんだボケ。  膝立ちして王司は自分のモノを両手で扱いていた。周りを見渡してもなにもない空間で真っ白だ。目に悪い。  ぽつん、と立ち尽くしている俺にも気付かず王司はイき、白い液を撒き散らしながらも落ち着いたら再び手を動かしていた。 「んッはぁ……んっ、んンッ」  自分で慰めているせいか、イイところばかり扱いてて泣いたぐちゃぐちゃな顔に――気持ちイイです。そう書いてありそうなほど。  気のせいだろうか。亀頭からカリにそって、爪で引っ掻くように刺激を与えてまたすぐにイこうとしてる様子が見える。そんなネチネチしてたってつまらないだけだろうに。  だけどいい感じにはなっているんだろう。膝立ちしていた格好で、腰が動いている。 「智志くんッ、んん……ハァハァっ、ぁん……」 「……」  あんなにも喘いでも自分の姿を俺に見せたくないとか言ってたくせに喘ぎに喘ぐ。これでもかと喘ぐ。俺がいるのに。  どこまで気付かないんだろう、と近付いて王司の真後ろまで来てみた。 「さとっ……ふぅんッ、あ、んっ」  気付かないみたいだ。気付いていないみたいで状況がよくわからない。  わかるのは、なにもない意味不明な空間にいて、王司はそれを気にせず穿いていたスウェットをずらして俺の名前を口にしながらオナっているだけ。……これだけだ。  これだけだが、これだけで……解決なんて導かれるはずもない。そもそもここはどこだ。おい王司、てめぇもヒンヒン言ってねぇでその手を止めろよ。  なかなか俺に気付かない王司にイラッとしてバシッと背中を叩いてやれば良い音とともに、 「ァ、ひゃっ――!」 「まじか……」  王司は何度目かの射精を、したらしい。  背中の衝撃で受けた痛み。それでイッたとわかりながら王司はこちらに振り返った。一瞬、絡まる視線にイラつく姿をとると、王司はまた前を向いて首を傾げる。  おいおいおい。今のは確実に俺と目が合っただろうが。お前おちょくってる?  王司の性癖関係なくこれにはちょっと言いたくなるよな? 「ハァ、ハァ……いま、なんか……智志くんに叩かれた、ような……?」  叩かれたんじゃなくて!  叩いたんだよクソ!……いや、つーか、見えてない?  そんなバカな――あれ、なんで俺はそういった発想になった? 「智志くん……どこにいるのかなァ……ん、」 「えぇ……」  俺と王司はガッツリ目が合ったくせにその目と合った俺、中沢 智志の存在はこの部屋ではいない者扱いのような反応。  そしてまた包み込むように両手で扱き始めたどうしようもないほどの変態。……王司のオナニーショーを見て誰が喜ぶんだ。  まぁこいつはモテるからそういった奴等になら興味をそそるショーだろうよ。でも俺が見ててもつまんねぇだけなんだけど? 「あッ、ん……はあ」  今度はゆっくりゆっくり上下に擦って、気持ち良く声を上げている。こうなったら目の前に出てきて、驚かせようか。  後ろにいても気付かなかったし、目が合ってもいない者扱いを受けたから、目の前に出てきても気付かないだろう。一人で勝手にハァハァ言いながらまたイクんだろ?  その様子を、見ててやろうじゃねぇか。 「ふ、ぅうんっ……さとしくん、好きッ、愛して、る」  す、と前に出て、しゃがむ。  王司の戯言なんていつものことだ。いつものことだが、ちゃんと受け止めている。俺だって好きだし、愛してる。気持ちは通じてる。  それをどのぐらいの回数で口にするか、しないかの問題であって……俺は滅多に口にしないだけだ。でも今は、見えてないっぽいから。声だって聞こえてないみたいだから。  そういうの、言ってやろうかな。――冗談だけど。  ピト、と王司のモノに触れる手。 「ふあっ……!なに――っ?」  見えてないのに感触はあるようで、驚いてるようだ。まぁ当たり前か。  むしろ怖いよな、誰もいないのにチンコは誰かに触られてる感覚があるって。体験したことはないが、怖いだろう。 「ふっ、ぁ、ぅんンッ……さとしくん……っ」 「……」  王司は俺が触れてから、自分で扱かなくなった。相変わらずアツいな……というか初めてじゃないか?  俺がこいつの触るなんて……意外と違和感ないな、とか思ってる時点でもう遅い。  だって王司とそれ以上の事をヤってるわけで……ガチガチに固く、反り立ってるモノに血管が浮き出ていて、まだ大きくなりたいのかヒクヒクと波を打っているのを手のひらで感じた。  人のチンコってこんな感じなのかよ……。自分自身のと全く違うモノのように感じる。王司だからか? 「あぅぅ、んッ……!あっ、キモチッ……んん!」  両手で輪っかを作り、偽物の穴を作って擦っていると王司はヒートアップ。さらに締めようかと思ったのか見えない俺の手の上でギュッと重ねてきた王司。  イきまくってるせいかこいつの精液で滑りも良くて、こっちもなんだか興奮してくる。 「ふっ……くぅ、んッ……!はぁ、ぁ……挿れたぁ、い……!」 「……挿れたいなら、ちゃんと言えんだろ?」  別に聞こえてないのに、言っちゃう俺もバカかと。 「あ、ぁんふ、ぅッ……!」  少しはやめた扱きに王司はイヤイヤと首を振りはじめる。たぶん、イくんだろ。 「イ、きたいッ!んぁ、ん……!さとしくんさとしくん、」 「だからちゃんと言えるだろ、って」  聞こえもしない声。俺が口開いてもしかたがないと思っていた。  のに、 「はぁぁ、んん!さとしくんッ、は、おれの……!ベトベトでぇ……!」 「……ッ」  つい、ピクッと肩が上がってしまった。  まるで俺が目の前にいるのを知っているかのような、くち。 「す、ぐッ、イっちゃぅ……っ、ベトベトでッ、きたない、粗末なッおちんちん、ですが……!挿れ、いれさせてくださいぃ!」  王司が言い切ったところで、ガバッと体を起こした。  

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