109 / 118
夢なんじゃないかと思った/黒編
はぁはぁ、と蒸し暑さを感じながら息が荒れる。周りを見ると、見慣れた光景で心をホッと落ち着かせた。
俺の部屋だ。
「はあ……」
今いる場所はベッド。つまり、俺は寝ていたのだ。
寝ていて、今、起きた。
あれは夢か……すげぇ夢だったな。つーかあの最後のお願いのしかた、結構キたなぁ……。やっぱ敬語ってイイのかもしれない。
変態になっていく自分自身に嫌気をさしながらも汗をかいた体が気持ち悪くて、風呂に入ろうとベッドから立ち上がる。
次の瞬間、柔らかくて、だけど柔らかくない、けど柔らかい床に、足がついていた。
「なん、だ……?」
なんだが久々な感じがする。心なしか部屋が、男特有の、ニオイが……してるような、していないような……?
夢の影響だろうか。
よく料理を食べるにしても味がわかるほどリアルな夢を見る時があるだろう。それと同じでニオイも、きっと夢の中の王司が何度もイったせいだ、と。
だけど、それでも嫌な予感は離れてくれなくて、リモコンを使って電気をその場でつけた。
「ん、ふぅ……」
「……」
気持ち良さそうに、半裸で寝ている王司の姿があった。
よく状況を確認しようと頭を振るように見渡したが、ニオイの正体は、現実の――本物が撒き散らしていた事件。
「こいつもう病気だ……怖ぇ……!」
本棚に入っていた本へ。あまり使わないノートパソコンへ。休日によく使う小さな鞄へ。枕元へ、こいつの精液がいたるところに。
「おい……王司、起きろ」
「ん、んんっ……」
なるべく殴らず、突くように、下半身丸出しな王司を起こす。
王子様は王子様でも、下半身王子様だな!
「おーじ」
「っ、ふぁ、んー……さとし、くん……?」
「そー、俺さとしくん」
俺の雰囲気を、感じ取ってくれたんだろう。
笑っている俺に王司はすぐ正座をしていた。
「あっ、いや、そのー……っ――」
夢なんじゃないかと思っていたあの夢の中の自慰行為は、現実世界で王司が慰めながら、だけど俺に気を遣って離れたり――でも寂しさを感じて近くでヤってみたり、一瞬だけ戻った理性を頼りにまた気を遣って離れたり……。
けど本能には逆らえず、結果的には“掃除をすればバレない”と……それはもうはっちゃけた思考回路だった、って。
こいつ……サルじゃねぇんだから、どうにかしてくれよ……。
「ごッ、ごめんなさいっ、智志くんごめんなさい!嫌いにならないでください!お、俺の!俺の粗末なおちんちんで、ソレでどうか、お許しを……!」
目に涙を浮かばせながら許しをもらおうと、敬語で。……キたわ。
「――って、それだとお前も喜ぶ形になるじゃねぇかよ!ふざけんな!」
グッと足元にあった丸出しなチンコを踏みつけると、飛び跳ねるように感じまくった王司が憎くてしかたがなかった。なのに、この後セックス展開になったのは、なんでだろうな!?
【その後の彼等 * END】
ともだちにシェアしよう!