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王子様×平凡←イケメン←会長様でプゲラッチョ/白編

   世界は妄想で溢れている。故に、修羅場なんてものにも発展しやすい。 ――高校の屋上は使えない。  こうやって漫画みたいに勝手に出入りしてイチャコラしてセックスなんてしちゃって。おいおいお前達は男同士なんだからもっとちゃんとしたところでやろうぜ?  コンクリなんて痛いだけだろ?――受けが。  そんなの可哀想だーーーー!  だけど、中等部の屋上は出入りが出来る。ここの学校のシステムがイマイチ理解出来ないと思いつつも、俺は遠慮なく出入りをしている。  やっぱ、違うんだよ。中等部生徒と高等部生徒って。  大学生は論外だ。  あいつ等はもう理性が出来過ぎて突破出来ない脳に進化しているから。中学、または高校の時ではっちゃけないと、なにも出来ない。  中学生はいい。  じゃれて遊んでるだけなのに、お前等そこまでくっつかなくても遊べるよな?と思うほどくっついてるし、わけもわからず女がいない環境で『チューの練習しようぜ!』も稀に見れたりする。  興味本位でチンコの触りっことか、大きさ比べで見たりとか、ちょっとぶっ飛んで扱き合いごっことか。そういうのが平気でやれちゃう歳なんだ。  高校生はいい。  おかしいとわかりながらも、気になって気になってしかたがないアレ。少し背伸びをしようとそいつを想いながらオナっちゃって後悔しちゃうようなアレ。ウマい。  この二つは、とてもいい。そして、全寮制男子校は、とても良い。とくにここは格別だ。端折って言えば、そういった恋愛感情を持つ人間ばかり。  ここは俺――木下 歩にとって楽園過ぎる場だ。  天気の良い空に腕を大きく広げて、先ほど見えた光景を思い出す。松村と、中沢の彼氏である、我が校のトップ・王司の会話を。  この二人が音楽室でバッタリ会って、見えない雷が落ちたのを俺はしっかり感じ取っていた。  すでに出来上がった中沢と王司。ずっと前から気付かない“恋心”を中沢に抱いていた松村。そして、そんな松村の恋人である我が校の生徒会長、五十嵐。  つまり最初は、平凡←イケメン←会長様になるわけだ。  どうよ、これだけでウマくないか?――俺の妄想プラン。  ずっと前からこういう妄想を俺の中でしていた。  実はな五十嵐について俺は知ってるから、俺の妄想プランに現実を取ってつけたような設定をぶち込んだだけなんだが……まさかのまさか。  本当に五十嵐と松村が付き合うなんて予想出来なかっただろうよ。  そんでもって王子様も登場。まさかの王子様→平凡←イケメン←会長様。からの王子様×平凡、会長様×イケメンだ。  まあ松村も中沢に恋心だけを抱いていたわけじゃないんだが。  本当に、ただたんに心配性なだけで、中沢をそういった目で見ているわけがないんだ。あいつは五十嵐と絡む前まではノンケだったわけなんだが。  五十嵐はガチホモ。女性はみなジャガイモに見えてしょうがないらしい。  あ、どうでもいいか。  そんなわけで俺の中で出来上がった妄想プランを、あいつ等が現実で実行してきた。結構な頻度で俺が誰かと誰かを勝手に妄想すると“付き合ってしまう”謎の現象が起こるんだ。  どうしてだろうな?  なにか特殊な能力でも俺の中に宿っているんだろうか。……だとしたら、ステキ過ぎる!  そして俺のためにみんなの妄想をぶわぁ!としてやるよ。  自分のためなら、俺は容赦しない。  そんな妄想プランで遭遇してしまった松村と王司の二人。硝子が割れたような音が俺の頭の中で響いたわけ!  だって王司は松村のこと嫌いだし!  そうそう、俺の事も嫌っているし!  え、なんでかって? は?  そんなの中沢関連だからに決まってんじゃん。  あんな平凡面に仲良く、それこそ“そこまでくっつかなくてもいい”ぐらいの距離を保っている。だけどそれが中沢のいいところであり、あいつはカッコイイ時が多々あるんだ。  外見とかの話じゃない、性格の話。まぁあの人見知りっぽいコミュ障っぷりを直せば外見的にももっとカッコよく映ると思うけどな。 ――王司はそれを知っているのかもしれない。  あとここだけの話、中沢は髪型で変わる男だ。  おぉ、今日なんかカッコいいなぁ、って時もあれば、よう!平凡くん!なんて時もあるしさ。……余談過ぎたな。  王司と松村。  二人が、二人きりで会えば水と油、ってわけでもないが……例えるならそれに近いものがある。会うや否や松村は中沢と過ごした授業の話をし始めて、ムッとわかりやすく表情に出した王司だからな。  そして勝ち誇ったような顔で『今日は木下の買い物の付き合いだから、智志を借りるよ』と。  俺の名前出すなよー。ただでさえ俺は五十嵐から危険人物として見られているのにー。副会長にまでそんな目で見られたら俺マジやってけねぇよー。  覗き見してた準備室からゆっくり、ゆっくりと音を立てずに鍵をかけた俺。これで安心して会話が聞こえる。胸を撫で下ろすかのようにすとん、と床に座って目を瞑る。 「まるで松村君のは一種の独占欲だ」 「まぁ、友人としての独占欲はあるよ」 「今は俺と智志君の時間だから、キミは黙っててくれないかい?」 「でも智志は俺の親友だから、優先するのは、どっちだろうな?」 「最近は俺を優先してるからその煽りには乗らないよ」 「そうか、そりゃ残念だ」 「木下君にだって、順平にだって、その他だって、智志君は誰よりもこれからは俺と一緒だから」 「……あっついねぇ」  うんうんうん。  うんうんうんうんうんうん。  

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