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王子様×平凡←イケメン←会長様でプゲラッチョ/黒編

  ――ハッ! なに妄想かました!? この展開はなんだ!?  つーか今の、現実妄想どっち!?  瞑ってた目を開き、座っていた俺は慌てて立ち上がり、ドアに付いている小さな窓から音楽室を覗く。すると、そこは――、 「じゃあそういうわけで、帰り遅くなったらごめんな」 「ううん、智志君からも聞いたよ。俺は“待つ”だけだからさ」 「……ほんと、大事にしてやって」  にっこり、と黒さも欠片もない爽やかな笑顔を浮かべる王司。  少しの心配を浮かばせながら口端を上げた松村……殺伐さが、まったくない。  つまり、あの短い会話は、俺の脳内で行われた、妄想か……。なにやっちゃってんだおい。結構こんな二人もいけると思ったんだけどなぁ。  でも松村はこんなこと直接言う男じゃないし、王司はドM攻めジャンルだからなに言われようと笑顔なんだろうな。  中沢限定だろうけど。 「はあ……」  そこでいなくなった二人に俺は中等部の屋上に来たわけだ。まあ松村と王司の火花散らすものもいいけどさ。  中沢のやつ、王司をもっとひどい目に合わすようなプレイしねぇかなぁ……。結局、王司はバリタチらしいから、レイプもの……は、無理だな。  王司が本気を出せばきっと喧嘩だって楽に勝てるだろうし。  中沢が王司に“ナニか”をヤれば、イケると思うんだけど……でもドMだから王司を喜ばせるだけか!  ははっ!  クソつまんねぇわ。 「んー、ひどい過激な話、どっかに落ちてねぇかなぁ」 「あ、木下先輩!」  妄想修羅場を終えたあとの賢者タイムに入っていたら、俺に懐くような声で呼んできた。 「……おー、後輩ちゃーん」  黒髪に金のメッシュが混じった可愛らしいヤンキーちゃんである二個下の後輩。俺が中三の時に出来た下級生だ。  こいつは今、中学三年生。成績に問題ない奴だからそのまま持ち上がりで来年の高校から一年間、また一緒にいられる日が多くなるだろう。  じゃらじゃらとつけたアクセサリーに第三ボタンまで派手に外して着崩す制服。たまに前髪にヘアピンをつけては可愛らしさをアピールしている確信犯なやつ。  中学生だからか背も低く、こいつ自身もはやく170センチにいきたい!と騒いでいたから、たぶん167センチなんだろう。――身体測定表にそう書いてあったから間違いない。  外見はヤンキー、中身は腐り果てた男。  俺の仲間さ。 「なんでこっちに居んスかぁ?」 「バカみたいな口調で俺に話しかけるなー」 「こうじゃなきゃ襲われちゃうんスよ!」 「お、いいねー。盗撮盗撮ぅ」  確かに俺から見ても可愛いと思えるような外見。  気を張ればキッと怖くは出来るが、子犬が威嚇しているような姿にしか見えない俺からしたら、そりゃ襲われるわな、と納得。  だが彼からしたら大問題。だってこいつは俺と同じ、ノーマルだから。 「変わらずゲスい性格してんスかぁ?」 「俺はゲスくない」  くあ、と欠伸をして否定。ゲスなんて、失礼な。見る側は自由だろ? 「唯一のノーマル仲間も消えてさ……いや、いいんだけど」 「あー!あの平凡先輩っスか!?……え!?ホモになっちゃったんスか!?」  どこか興奮する後輩に頷きながら向こう側にある高等部校を見つめる。夏休み明けの古河もマジ泣きしながら『感化されてた……』と言っていた。  俺からしたらテンションが上がる萌え要素として増えてるし、むしろ嬉しいものだけどな。 「やっぱ平凡受けなんスかー?」 「そうそう。しかも、愛され平凡くん」 「俺の大好物!」  俺だって大好物だっつの。  あんな無意識に松村や五十嵐、古河達に愛されちゃってて。すごいぞ中沢。 「はぁ……」  寝転がっていた体を起こして大きな溜め息を吐く俺の肩は随分と下がっていた。 「先輩?なんかあったんスか?」  心配そうに覗き込んでくる後輩。それでも話す気にはなれず、もう一度欠伸をして立ち上がる。  妄想とは、傍観者の位置に立って成り立つものだ。当事者になったらそれはもう妄想ではなく、現実。 「そーだ、後輩ちゃん」  黙って寮に戻ろうとしたが、少し聞いてみたくなった。 「なんスかぁ」  いい事を聞いたからか、それとも先輩用の良い笑顔を貼り付けただけなのか、はたまた別の考えでもしていたのか。わからない表情はニコニコしていた。  だからこそ今しかない問いだった。 「元カレのもとへ犯されに行くシチュエーション、どうよ」  俺が笑顔で提案したものは、 「……外道にも、ほどが……」  苦笑いで返されたものだった。 「先輩?それはないっスわ。寝取りってやつっスかぁ?」 「んー、そんな感じ?」  なに言ってるかわからない?  いずれわかんじゃないかな。  今はとにかく目の前にある楽しいもので充実させることにするよ。俺は俺、彼は彼。  ノンケでもとりあえず身体から入っちゃえば情なんていくらでも出てくるだろ?  というわけで、ここは明るく終わりにしよう!  俺の推しカプは、受け同士な百合百合っ!  松村×中沢! ――よろしくな! 【それからの彼 * END】  

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