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【少々番外編】少しの安心感
いつもの時間より少し遅くなって終わった生徒会の仕事。
今夜のご飯はなんだろうと考えながら寮の部屋に戻るとただいまの返しがない違和感に、やられた。
「智志君、」
いつもはかったるそうに『おかえり』と言ってくれるのに今日はなし。代わりにざわついたいろいろな音が聞こえてきた。
遠慮気味の音量で流れるテレビ。バラエティー番組の再放送か、それともスペシャル直前である放送でやっているのかはわからないが、夕方そうそうにやっていいレベルじゃないものだ。主に下ネタ関係。
今流行に乗ってる芸人に加えてお馴染みの司会者は数多くの番組を受け持つ有名人。隣には綺麗な女子アナウンサーがいて、だけど大事なニュースを読み上げるあの真剣さはなく、砕けた感じで進行させている。
俺も見た事ある、ゴールデン進出したとても面白い番組。智志君が毎週のように見ている番組だ。
智志君、これ見て笑ってんの。
学校での疲れも吹っ飛ぶのか面白さで癒されて見ているのかはわからないけど、あの低い声で、ちょっと掠れてて、それがまた良くて。
俺の耳に響き渡るその声で――罵声ってほしい、って。
どんな笑い声でも俺の頭の中ではバカにしたような笑みに変換して、勝手に興奮して勝手に妄想に浸って勝手に、快楽を得る。
こんな技、智志君を掴まえてから取得したようなものだ。あの声でこの声でって、何度も何度も聞いて感じて昂って。
だから智志君を笑わせてくれるこの番組は、智志君同様、俺も大好きな番組。
「智志くーん」
テレビに映る人物はちょび髭で小太りの七三分けの芸人男。テロップを見るにしてもその文字の背景色にしても、BGMにしても、流れは完全に下ネタで、この番組のウケを狙おうとしている芸人。
実際、司会者とアナウンサーは爆笑失笑でスタジオの笑いを取れているのがうかがえる。――そんな俺は、ソファーで横になりながら目をつぶっていた智志君の顔を、窺う。
寝てる。
「危ないよ、智志君」
「……」
声をかけてるつもりでも夢の中に入っている智志君の耳には届かない。俺の声が、全くだ。
口のナカに入っていたある棒をゆっくり抜いた。
先っぽには小さくなった丸いピンクの玉が付いている。まるでビー玉みたいな小ささで、一瞬の甘い匂いに俺が舐めたくなるようなもの。
チュッパチャップスを咥えたまま寝ているなんて危な過ぎるね。というか智志君がチュッパチャップスを舐めてたなんて、可愛いよね。
全部舐め終わったこの棒で俺のどこかを突いてくれないかなァ……。
かぽ、と軽く歯に当たった飴玉は我慢出来ずに俺の口のナカへ。
今さっきまで智志君の口のナカにあった飴を、俺のナカに。ああ、ストロベリーか。いちご。だからピンク。赤。……智志君の寝顔、
「かっけー……」
がり、と脳内に響いた音は俺が飴を噛んだ音。
チュッパチャップスを抜いたせいで出来た隙間から流れるように出てきたヨダレを見付けて、つい本音をこぼしながら、ありがたく舐め取っては薄い唇を貪る。
起きたらどうしよう。このままきっと殴られる。あの声で、俺の大好きな声で暴言を吐きながら寝起きの智志君の力で殴られる。そのまま彼は起き上がってキスした唇を手の甲で拭うんだ。俺がキスしたその唇を、俺に殴った拳で、拭い取って、睨む目にまた暴言を、吐く。
吐く。
「ん……っ、」
「さとしくんッ、」
この先、起こりうる展開の可能性に俺はさらに興奮してきて、今もなお無抵抗状態の智志君の口内に舌を滑り込ませた。肩に手を付いて横向きから仰向けにゆっくり倒しながらソファーへ。
智志君の上によじ登るかのように、体を重ねる。
「ぁ……ん、んんぅ、はあッ」
「ふっ、しゃと、し……」
やっと目が合った。
眉間にシワを寄せて、最初から相手をわかっているかのような目の開き方に、全身が震える。
驚きで勢いよく開けるんじゃなくて、ちゃんと、目から伝わる『てめぇが犯人だろ』と言われてるような開き。近距離で絡まった視線に俺はまた勝手に想像して勝手に喜びを得て勝手に――勝手に俺のおちんちんが熱くなる。
はあぁ……っ挿れたい……。ダメなら擦り合いたい……。もっとダメなら、さとしくんのおちんちんを、なめたい……。
「んがッ、まさや、おい……んん!」
「ぁう、んーん……智志くん、さとしくん……智志君、」
寝起きの思考回路はカタカタみたいで、やっと覚醒し始めたのは智志君の股間に割り押し込んだ俺の足の動き。
俺のはとっくに勃起しているから気付いてるんだと思う。気付いてる。そう思うだけでまた大きくなった気がする俺のモノ。どうしようもない。どうしようも、
「おまえな……いきなりにもほどが……」
どうしようもないほど、
「智志君あっまい……好き」
「だから……なにもかも急過ぎだっつの。くそ野郎」
ぺチンと頬に弾かれた手のひらから伝わってくる安心感は俺だけのものに出来てて、こんな俺でも嫌わない智志君が好き過ぎる。
愛し過ぎる。
【少しの安心感*END】
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