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第5話

「──っ」  唇が離れないように、弱く抵抗するアンバーの頬を両手でしっかりと固定して、アンジュは体重をかけてのしかかり、自分よりも遥かに大きな身体をベッドに押し倒した。 「……んん……ぅ」  熱を纏った長い舌に自分の舌を擦り付け吸い上げると、アンバーは喉元を震わせて切ない吐息を漏らした。  抱き合う身体の間でお互いの半身がぶつかり合って、アンバーの熱がドクドクと脈打ちながら伝わってくる。  ──こんなに熱くなってるくせに!  硬く目を閉じて、堪えるように眉根を寄せている表情を崩したい。  アンジュは、更に激しくキスを仕掛け、アンバーのものに自分の身体を押し付けて腰を揺らした。 「っ、はっ……、これ以上は駄目だ……アンジュ……」  愛しい人の情熱的な誘惑に、さすがのアンバーも抗えない。砂が崩れるように堕ちていく理性を掻き集め、僅かに離れた唇の隙間から、喘ぐように訴えた。 「駄目じゃない。アンバー、ちゃんとオレを見て」  それでもアンジュは、目を逸らそうとする琥珀色の瞳を覗き込む。 「ウェアウルフと番った人間のΩは短命だ? データだ? そんなの知るか。原因も分からないし、証明されたわけでもないだろ?」 「……でもっ……」  言いかけるアンバーの口元を、アンジュは人差し指でそっと押さえた。 「もしもそれが原因でオレが短命だったとしても……、きっとそれがオレの寿命なんだ」  アンジュの言葉に、アンバーは驚きの声を上げる。 「な、何言ってるんだ!」 「元々、Ωは身体が弱いだろ? だからイアンやアンバーのお母さん達のように、早くに寿命がきたとしても、別におかしくはないんだ。ウェアウルフと番った所為じゃない」  現にアンジュの母親も、アンジュが父親の家に引き取られた一年後に身体を壊して亡くなったと聞いている。  それは、この世界でΩ達が生きていくには、厳しい環境である所為かもしれないが。  それでも納得がいかないという顔をしているアンバーの頬に、アンジュはそっと口づけて言葉を続けた。 「もしも、もしもだよ。番になった事が原因でオレがもの凄く短命だったとしてもだよ? それでもきっとその時は“幸せだった”って笑って死ねると思うよ」  ──お前が一緒に居てくれればの話だけどな。  と、最後の言葉はアンバーの耳元で小さく囁いた。  アンバーと出逢っていなければ、誰かをこんなに愛することなんて、きっとなかった。  あのまま、男娼になって身体を売って、そして心身ともに疲れていっただろう。自分が死んで悲しむ人なんていなかっただろう。  今ここで、こんな風に考えられるのも、こうして好きな人に抱かれる事ができたのも、アンバーと出逢えたから。 「だから、ずっと傍に居てよ、アンバー」

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