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第6話
「…………っ」
アンバーは思わず息を呑みこんだ。
次の瞬間には、アンジュの身体を掻き抱き、素早い動きで反転させた。
それは、あっという間の事で、アンジュは最初何が起こったのか分からなかった。
気が付けば、さっきまでアンジュの下で情けない顔をしていたアンバーが、今は逆転してアンジュを組み敷いて見下ろしている。
「本当に……君は酷い人だ」
いつもよりも低い声が落ちてくる。
その表情は、今まで見たことがないくらいに男らしい色気に満ちて、大人びて見える。
──年下のくせに。
と、心の中で思うが、それでもそんなアンバーに、アンジュは腹の奥が疼くのを感じてしまう。
「必死に我慢してたのに。そんな苦労も知らずに……」
「こんな時に我慢なんかしなくていい」
アンバーが微かに苦い笑いを浮かべたので、アンジュもニヤリと口元を弛ませた。
──『だから、ずっと傍に居てよ、アンバー』
アンジュの言葉は、硬く心に誓ったはずの防壁を容易く崩してしまったのだろう。
アンバーだって、本心はアンジュと同じなのだ。
自分の中にしっかりと掛けた筈の鍵が外れ、心を縛っていた鎖が重い音を立てて解けていってしまうのを、アンバーははっきりと感じたのだろう。
「アンジュを失いたくないのに……」
「俺は、そんな簡単に死なないよ」
逞しい首に腕を絡め引き寄せると、アンバーは熱い溜め息を吐いた。
「もう力を抑えきれないんだ。どんな事になっても知らないよ」
「そんな酷い事には、ならないだろ? お前、優しいもん」
何故そんなことを言うんだろうと、アンジュは思う。今夜のアンバーはずっと優しく抱いてくれていた。
初めて狭い場所に男を受け入れたというのに、気持ちよくて、何度も何度も昇りつめた。痛みや苦しさなんてまるでなかった。
ウェアウルフとのセックスに不安がないと言えば嘘になる。だけどそんな小さな不安はアンバーの優しさが忘れさせてくれていた。
きっとそれは、アンバーがアンジュの身体を大切に抱いてくれたからだと思う。
「たぶん……優しくできないと思う」
なのに、今更そんなことを言う。
「いいから……早くこれでオレをめちゃくちゃにしろよ」
熱くて、ずっしりと重い、アンバーの滾ったものへ伸ばしたアンジュの手を、アンバーは強い力で掴んで止める。
「……アンバー?」
その時、アンバーの様子が急に変化した事に気付き、アンジュはアンバーを見上げた。
アンジュの手を掴んだアンバーの手が小刻みに震えだしたのだ。
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