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第9話

 アンジュが胸元にいる狼の頭に手を伸ばす。その艶のある黒い毛を撫でると、アンバーは硬く尖った胸の粒を舌先で転がしながら視線を上げた。  琥珀色の瞳は、今は金色に煌いてアンジュに視線を合わせる。  その瞳が、『何?』と返事をしているのが分かる。 「アンバ……」  もっとして。もっと触って。  全身が性感帯になったみたいに、どこに触れられても気持ちいい。  アンバーが動く度に、狼の毛先が肌を擽り刺激する。それだけで背筋に快感が走り抜け、アンジュはシーツを掴んで身を捩らせた。  だけど、もっともっと欲しくなる。  そんなに気遣って、爪を丸めなくていいから。そんなに優しくしなくていいから。  頭の中が朦朧として霧がかかったようになって、何も考えられないのに、もっと気持ちよくなることを考えている。 「壊れてもいいから……もっと……」 「……っ、煽るな……」  ──理性が吹っ飛ぶ。  そんならしくない言葉が聞こえた気がして、狼の荒い息遣いが、更に激しくなった。  はっ、はっ、はぁ、はっ、と、短い間隔で聞こえてくる。  いや、違う、アンバーだけじゃない。と、アンジュは気付いた。自分の吐く息遣いも混じっている。  ──そうだ。オレもアンバーと同じ獣だ。  狭い部屋に、二人の獣の吐く息が充満する。  アンジュの肌に汗が滲み、アンバーの漆黒の獣毛は湿り気を帯びる。  お互いの吐く荒い呼吸と、お互いの体温の熱さと、お互いの匂いがこの部屋の空間を埋め尽くす。  獣じみた空気が、この空間いっぱいに満ちる。  それだけで、アンジュの身体は熱く興奮していく。  腹の奥がキュウッと疼き、熱い愛液が滲み、アンバーの雄を欲しがって後孔がひくついた。  痛いほど勃ち上がった半身も、先端から蜜が零れ、淡い色の下生えを濡らす。 「……っ、はっ、あ……ぅ」  鋭い爪で胸の尖りを緩く引っ掻きながら、アンバーはアンジュの白い肌のあちこちを愛撫する。  できるだけ優しく、時々荒々しく。  臍に舌をねじ込み、細い腰の括れをはぐっはぐっと、甘噛みする。  アンジュを傷つける事は、なるべく避けたい。だけど時々本能が顔を出し、呑まれそうになるのを堪えているようだった。 「……っ、あ……」  股間にアンバーの熱い息がかかり、アンジュは思わず甘い声を上げる。  ──そこを触って、扱いて、イかせて。  はしたない言葉を口に出してしまいそうで、アンジュは手の甲を噛み、自分の口を塞いだ。 「……っふ、う……う、あっ、……い、あ……っ」  それでも、恥ずかしい喘ぎ声は漏れてしまう。  アンジュの考えていることが分かったのか。先走りに濡れる屹立に、狼の長い舌を絡められたのだ。  びちゃり、びちゃりと、アンジュの先走りを舐めとり、強い力で擦り付けられて、同時にパンパンに張った双珠を柔らかな肉球を持った大きな手のひらに揉みほぐされて……。 「やっ、あ、う……っ、駄目……」  して欲しかった事をしてくれているのに、口が勝手に動いてしまう。 「……駄目?」  アンバーが動きを止めて、低い声で聞いてくる。  その声は、ちょっと笑いを含んでいて、意地悪だ。 「駄目じゃない……」 「どっち?」  尖らせた舌の先端で、先走りが滲む蜜口を突かれて、腰が震えた。 「やっ、あっぁ……イくっ」

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