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第12話

 そこが待ち侘びたように、また、きゅうっと熱く疼く。その快感に、触られてもいない半身から白濁が迸った。 「……あ、ああっ」  同時に腹の中では、アンバーがドクンと大きく脈打つのを感じて、その疼く入り口に、直接熱い飛沫を浴びせかけられた。  最初は勢いよくドクドクと注ぎ込み、そしてアンバーは、更にゆるゆると腰を進める。  さっきよりも深く。  さっきよりも、はっきりと先端が子宮口に当たる。  そこに、ぐりぐりと擦り付けるように、アンバーは腰をグラインドさせながら奥を突く。 「ああっ、まだ……出てるのに……」  狼の射精は、長い時間をかけて、ゆっくりと少しずつ、温かい精液を子宮に注ぎ込んでいく。  ぐちゅ、ぬちゅと、アンバーが動く度に淫靡な音が漏れ響いた。 「……もう止まらない」  上半身を押さえ込まれ、頭を抱き込まれ、がくがくと揺さぶられる。  熱い先端が、もっと奥へと潜り込もうとしている。 「ああっ、だめ……そんなとこまで、入らないっ」  前に逃げようともがいても、アンバーの根元で膨らんだ瘤が、中でぴっちりと嵌り込んだまま抜けない。  身じろぐことも許されない状態で、重い衝撃を何度も何度も繰り返される。  いつもの優しさなんてどこにもない。  どこか頼りなくて、ヘタレなところもある年下の男が、今は圧倒的な力で、アンジュの身体に快楽を覚えさせ、種付けをする。  お前は俺のものだ。他の誰にも触れさせないと、自分の匂いを擦り付けてくる。  これがきっと本能のままのアンバーなのだろう。  たっぷりの精液を注がれて、腹ははち切れんばかりに重くて苦しい。  そんなところまで、凶器のような狼の猛りを受け入れたら、人間は壊れてしまうかもしれない。  だけどアンジュは、奥を突かれる度に、甘い嬌声を上げた。 「おく……いぃ……きもちいい」  甘い痺れに、体内が、全身が、侵食されていく。  腹の中が温かくて満たされる。  さっきまで、何度達しても足りなかったのに、満たされていく。 『満月の夜は、子孫を残すという本能だけでセックスをする生き物なんだ』 『いいよ、それでも。お前の子供ならオレは産みたい』  ついさっき、そんな会話をしたけれど。  ついさっきも、もちろん心からそう思ったはずなんだけど。  今は、もっと切実に思う。  ──ああ……こいつの子供を孕みたい。  アンジュが、本当に心からそう願った瞬間、身体から花の香りが一層甘く広がった。  まるで季節を迎えた花々が、一斉に咲き誇ったかのように。  うなじにアンバーの荒い息が吹きかかる。  熱くて火傷しそうだ。  口吻をがばっと開き、アンジュのうなじに狼の牙が時々緩く当たる。  はぐはぐと甘噛みだけをして離れたり、また触れてきたり。  アンジュは密かに口元を緩ませた。  獣の姿になったら理性を失うなんてことを言ってたけれど、ちゃんとアンジュのことを想って、まだ躊躇している。  ──なんと優しい獣なんだろう。 「いいよ、アンバー噛んで、早く。全部お前の物にしろ」  少しだけ命令口調でそう言ってやると、その直後にアンバーはうなじに牙を突きたてた。  噛まれたところから焼け付くような熱さが広がって、身体全部が書き換えられていく。  アンジュは、遠退いていく意識の中でそう感じながら、『愛してる』と何度も耳元で囁く優しい声を聞いていた。

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