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第13話『新しい日々の始まり』
第二章────『新しい日々の始まり』
薄いカーテン越しに射し込んでくる眩しい光に、アンジュは瞼を細く開けた。
太陽はもうすっかり高い位置まで昇っている。
(今何時だろう……。そろそろ起きないと……)
だけど、背中から自分を包み込む逞しい腕を退けようとしてみたが、うまく力が入らない。
アンバーの心地よさげな寝息が耳を擽って、アンジュは首を竦めた。
(仕方ない。もう少しこのままでいよう)
アンジュは、ベッドから抜け出す事を早々に諦めて、力を抜き、アンバーの腕の中に身体を委ねた。
背中に感じる穏やかな体温。回された腕には獣毛もなく、鋭い爪もない。
アンバーは、すっかりいつもの人間の姿に戻っていた。
彼の纏う空気が昨夜とは全然違う。まるで別の生き物だ。
犬のような格好で後ろから身体の中を貫かれ、アンジュの薄い腹は狼の陰茎の形を浮かび上がらせた。
アンバーが前後に腰を動かすたびに、アンジュの白い肌は熱で染まり、ギリギリまで開かされた身体は悲鳴を上げるように、骨が軋んだ。
亀頭球でしっかりと繋がって、アンバーの陰茎は抜けない。彼が言ったように、途中で止めることはできない。
結合部からは、アンジュの体内から滲み出る愛液とアンバーが放った精液が混ざり合い、泡立つ音を響かせる。
苦しいけど気持ちよくて、アンジュは自分から腰を揺らして、“もっと”を欲した。
お互いに求め合う、その欲は留まるところを知らない。
それは本当に獣の発情する様だった。
「……あ」
──まただ。
昨夜の快楽を思い出すと、また下腹部が疼き、身体が熱く火照ってくる。
もう満足したはずなのに、また半身が芯を持ち、頭を擡げ始める。
今すぐに、もう一度あんな風に抱かれたい。
もう太陽があんなに高い位置にある、こんな真昼間から、不埒な事を考えてしまう。
Ωの発情期は一週間続く。
ウェアウルフと番になったΩは短命だと言う説は、案外本当なのかもしれない。
──こんな状態で、毎回あんなセックスをしていたら、身体がもたない。
そんな考えが頭を過ぎり、アンジュは薄い笑みを浮かべた。
だけど……あの時、うなじに感じた熱い幸せな痛み。
弛緩したアンジュを背中から抱きしめて繋がったまま、アンバーはごろりと横になり、うなじから流れる温かい血を狼の長い舌で何度も何度も舐めてくれていた。
まるで毛づくろいをするみたいに、何度も何度も。
『愛してる』
『愛してる』
『愛してる』……。
遠のいていく意識の中で聞いた優しい声。そして身体の奥にまた精液が注がれるのを感じていた。
狼の精液の量は、人間の10倍もあるという。
ずっと繋がったまま、長い時間をかけて、アンバーはアンジュの耳元に『愛してる』と囁き続けていてくれたのだ。
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