17 / 78
第17話
「……ふ、ぁ?」
捕まえて、ぎゅっと握ると、アンバーは重ねた唇の隙間から声を漏らし、肩を震わせた。
ふわふわしているのに、意外に力が強い。握った手ごと、ブンッと振られて、引っ張られる。
「……尻尾だ」
「バレてた?」
「別に隠さなくてもいいだろ?」
アンバーがウェアウルフなのは知ってるし、昨夜は完全な狼の姿をしたこの男に抱かれたのだから。
「うん……そうなんだけど……」
アンバーは、ばつが悪そうに応えながら、尻尾を掴んでいるアンジュの手を解く。
「……起きたらアンジュが、一人でエロい事をしてて……」
「なっ……」
今度はアンジュの方が、ばつが悪い気持ちになる。
その隙を突くように、アンバーが掴んだ手をシーツに縫い止めて、上から伸し掛かってきた。
アンバーの後ろで、大きな尻尾を嬉しそうに左右に振っているのが見える。
「……だから、我慢出来なくて……つい……ね」
パサっと、落とした尻尾をアンジュの脚に巻き付けて、お互いの唇が触れ合う距離で、アンバーはそう囁いた。
アンバーの尻尾は、フサフサしていてボリュームがある。その毛並みの一本一本が艶々していて肌触りが気持ちいい。極上の毛皮だ。
「……ん、ぁ」
触れるか触れないかの絶妙さに、発情期で敏感になっている身体が快感を拾う。
「気持ちいいんだ?」
言われて顔が熱くなる。
「う、るさい……それより“つい”って……どういう意味だよ……っあ、ん……」
意志を持って動く尻尾に、肌を撫でられて、アンジュはアンバーの身体の下で身じろいだ。
「興奮すると、つい本能が出ちゃうって事かな。興奮するのはアンジュにだけだけど……」
ウェアウルフは満月の光を浴びると必ず発情する。それは相手がΩでなくても性欲が抑えられなくなる。
ウェアウルフにとって、満月の光は一種の興奮剤のようなものなのだろう。自分の意思には関係なく欲情してしまう。
「でも今は自制が効くし、満月の夜以外は、番になったアンジュにしか興奮しない」
アンバーの言葉に、アンジュは口元を緩めた。
「満月の夜は、浮気できるって事か」
アンバーは、そんな事はしないと、本当は分かってる。理性を失くすと言いながらも、昨夜のアンバーは常にアンジュを気遣ってくれていたから。
「そんな事には絶対ならないよ。満月の夜はアンジュの傍から離れない」
そう言って、アンバーはアンジュの下唇を甘く噛む。
「だから、ずっと一緒にいてくれる?」
「……しょうがない、な。ついでに分厚いカーテンも買っておかないと……な」
そして唇が重なる。
二人だけの約束だ。
*********
「あ……っ、ぁ、う……あっ、イく……」
大きく開いた脚を、アンバーの腰に絡ませて、アンジュは胸を突き出すようにして背中を反らした。
「いいよ。一緒に……っ……」
お互いの腹の間で、硬くなっている猛りがビクビクと跳ねて、白濁を撒き散らす。
ぎゅっと抱きしめられて、アンバーの胸に顔を埋めると、じわりと熱いものが身体の奥に広がっていく。
「狼は、番になった相手を死ぬまで大切にするんだ」
荒い息と、アンバーの優しい声に包まれる。
「僕は、一生アンジュの傍を離れない」
嬉しくて、アンジュもアンバーの背中に手を回して、ぎゅっと抱きしめた。
「オレも……死ぬまで……ううん、死んでもずっとお前と一緒にいる」
ともだちにシェアしよう!