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第28話
「お前と俺の子供なら、きっと美しい白い毛並みのαが生まれるだろうよ。なぁ、そうしたら種なしイアンも雑種のアーロンも押し退けて、俺が次のウェアウルフ族の長になれる可能性も出てくるわけだ」
高い位置で腰を片手でしっかりと固定され、後孔の入口を獣の太い陰茎の先端で円を描くように擦りつけられる。
まだアンバーの温もりが残っているそこを、先走りをダラダラと垂らす雄の一物が割り入ろうとする。
「……っ、ぃ……や……ッ」
血が滲むほどに唇を噛みしめ、全身に力を入れて男の侵入を拒む。
「まだ、そんな抵抗する元気あるのか? いい加減諦めろ」
だけど、そんな態度が余計に男の加虐心を煽っていることを、アンジュは知らない。
腰を押し付けながら、男の手が前へと回り、萎えたままのアンジュの半身を握り込んできて、ゆるゆると上下させ始めた。
「っ、ン、……っ、……さわ、るな」
触れられても擦られても、不思議なくらいにそこは反応を示さない。番以外の男に触られても、気持よくなる事はないのだ。それどころか、ただただ不快で、その摩擦に痛みが走る。
「いいから、力抜け。俺のものになれ」
「だれ、がっ、───お前なんかに……!」
踏みにじられたくない。汚されたくない。
そこに入っていいのは、アンバーだけ。
こんな男の慰み者になるくらいなら、舌を噛んで死んだ方がマシ。
だけど、死ぬ前にもう一度、お前に逢いたい。
お前に抱かれたい。
「……アンバー」
届くはずもない名前を掠れた声で口にすると、どこからともなく愛しい男の甘い匂いが漂ってくるような気がした。
「──アンジュ!」
逢いたいと、強く思ったからなのか、幻聴まで聞こえてきた……。
そう思った瞬間に、部屋の扉が勢いよく開かれた。
「アンジュ!」
駆け込んできた影が、悲痛な声で叫ぶ。
ぼんやりと霞む視界がだんだんと晴れて、アンバーの姿をはっきりと捉えた。
「……アンバー?」
怒りに満ちた顔で、こちらに鋭い視線を向けて、その身体を漆黒の狼に変化させていく。こんな彼は初めて見る。
その瞬間、男の身体が跳ねるように飛び退いて、アンジュから離れていく。
男が伸ばした手の先には、さっきの拳銃が転がっている。
「来ちゃダメだ! アンバー、逃げろ!」
アンジュは咄嗟に叫んで、男の身体に背後から飛びついてタックルを決めた。
アンバーがそこにいるだけで、身体の奥底から力が沸き上がってくるような気がした。
自分はどうなってもいい。絶対にアンバーは死なせない。
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