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第44話
「そうだね、びしょびしょだ」
アンバーはボタンを外し、肌にピタピタに張り付いているシャツを、身体から剥がすようにして脱ぎ、濡れた音を立たせながら床へと投げ捨てる。
少し褐色を帯びた肌と、程よく筋肉のついた引き締まった上半身が、明るい照明の元で露わになる。
満月の夜からずっとこの身体に抱かれ続けて、もう見慣れたはずなのに、やはり視線を奪われてしまう。
続いてアンバーはバスタブの中で立ち上がり、アンジュのちょうど目の前でズボンのファスナーを下ろした。
きゅうくつそうにズボンの布を押し上げていたモノが解放され、アンバーの腹を打つ。
それと同時に、ふさふさの黒い尻尾が後ろで跳ねあがったのが見えた。
「……っ」
思わず息を呑むアンジュに、アンバーは照れたような表情を浮かべた。
「ごめんね。こんな時に節操なくて」
「ば……ばか」
それはアンジュも同じだった。あちこち痛くて、動くのもやっとなのに、身体はアンバーを欲しがっている。
腹の奥深いところが、アンバーの熱を期待してキュンと疼く。
「男二人で入るには、やっぱり狭いね」
そう言いながら、アンバーはアンジュの後ろへ回り、バスタブの中に腰を下ろした。
「…………」
脚も全部伸ばせなくて、身動きできないくらいに狭いバスタブの中で、ぴったりとくっついた身体を、背後から回された腕に抱きしめられる。
アンバーの熱い猛りが、腰の辺りに押し付けられて、その脈動が伝わってくる。
たった今、爆ぜたばかりなのに、欲しくて、欲しくて、堪らなく身体が熱くなってきて、アンジュは唇から小さな吐息を零した。
「で……、さっきの返事聞いてないんだけど……」
突然耳元で囁かれて、小さく肩が揺れた。
「さっきの返事って?」
「僕の口の中でイった時、気持よかった?」
「……っ、な……? お前、しつこいな」
「いいから、教えて」
後ろから耳殻をぺろりと舐めながら、アンバーは諦める様子もなく低い声で囁く。それだけでアンジュの身体は快感を拾い、びくびくと震えた。
「わ、分かったから……な、舐めるな!」
これ以上煽られたら、我慢ができなくなる。こんな狭い場所でもお構いなしに、せがみたくなる。
一息ついたら出発しなければいけないのに。
一度始まれば、止まらなくなる。またベッドから抜け出せなくなってしまう。
「気持ち……良かったよ。すごく」
頬を赤く染めながら答えると、背後からぎゅっと強く抱きしめられる。
「嫌なこと、全部忘れるくらいに気持ちよかった?」
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