流れ込んでくる湯と内壁から滲み出る熱い粘液を、中で掻き混ぜるように、アンバーの指が蠢く。 　感じる一点を押さえられ、アンジュは白い喉を反らして切ない声で喘いだ。 「……っ、あ……、ふ……ッん……ぁ」 「……すごい、指、締め付けてくる……たまんない……」 　荒い息を吐きながら、そう言って、アンバーはアンジュの項に歯を立てた。 「──っ、あぁ……ッ」 　その瞬間、アンジュの身体から、まるで春の花がいっせにに咲き誇るように、甘い匂いがいっそう強く放たれた。 「すごく、いい匂い……してる」 　まるで匂いごと食べるように、アンバーはアンジュの項をハグハグと齧る。 　肌にかかる荒い息遣いと滴る唾液の熱さに、アンバーが興奮しているのが伝わってくると、アンジュもまた腹の奥が熱く疼いた。 「……っ、アンバー……っ、もっと、お……く……」 　鼻から抜けるような声で、アンジュが強請る。 「もっと奥？　もっと奥まで触られたの？」 「……ち、がっ、違……ッう」 「違うの？」 　あんな男の事なんて、すっかり忘れていた。 　今は、アンバーの事で頭がいっぱいで、全身がアンバーを欲している。 　さっきからずっと腰に当たっている熱くて硬いモノで、奥まで埋め尽くしてほしくてたまらない。 「もう、あいつのことなんて、忘れた……もう、アンバーの匂いしかしない」 　もう、吐き気も寒気もしない。代わりに、全身の血が沸騰したように熱くて、どくどくと脈打つ鼓動が、どんどん大きくなっていく。 　アンジュは、自らアンバーの猛りに擦りつけるように、腰を揺らした。 「……っ……、やば……ッ」 　アンバーは、思わず声を漏らし、慌てたようにアンジュの身体の中から、するりと指を引き抜いた。 　ぐるるる……。 　そうして、堪えるように喉の奥を鳴らす。 　身体に巻き付いていた腕が解かれて、アンジュはアンバーを振り返った。 「……もうちょっとで、アンジュの中を傷つけるとこだった」 　鋭く伸びた爪を見せ、アンバーは目元を細めた。 　いつの間にか伸びた口吻と、身体を覆う漆黒の獣毛。 「身体を綺麗にしてただけなのに、アンジュが煽るから……」 「俺のせいにするな。煽ったのはアンバーの方だろ？」 　──もう、どうなっても知らないからな。 　そう言葉を続けて、アンジュはアンバーの鼻先に口づけた。 　狼の射精は一度始まれば、終わらない。すぐにここを発つつもりだったのに。そんなこと、アンバーも分かってるはずだったのに。 　アンジュはアンバーの方へ向き直り、腰を浮かせた。 「出発は、明日の朝でいいよな」 　アンバーの猛りを後ろ手に掴み、その先端を自らの後孔にあてがうと、アンバーはアンジュの肌を傷つけないように爪を丸め、華奢な腰を支えるように手を添えた。 「そうだね」 　ペロリと薄く長い舌で桜色の唇を舐めると、アンジュはアンバーの首に腕を絡め、ゆっくりと腰を下ろし、獣の肉棒を身体の中へ埋めていく。 「……ん……っ」 　湯に濡れた漆黒の獣毛が肌に触れ、ちゃぷんと水音が浴室に響く。 　その音は、最初はゆっくりと、そしてだんだんと、激しい音に変わっていく。 　もうすぐ、また陽が沈み、夜の闇が満ちる。