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第64話

 灰青の瞳が真っすぐにケニーを見つめ、少女は水際へと上がってくる。 「ケニー!」  このままでは、ケニーが危ない。  ──止めなくては!  無我夢中で飛び出そうとする友人に、今度は残りの若者達が、その身体に飛びつくようにして必死に止めた。 「ばか! 出ていったらお前までやられる! 湖の周りをよく見てみろよ。狼がうろついてる」  言われて目を凝らすと、暗がりに潜む獣の姿が見えた。金色に光る無数の眼が、湖を窺っている。  きっと、先ほどの少女の遠吠えに反応して集まってきたのだろう。 「だけどケニーが……」 「あいつは……もう駄目だ。見ろよ」  水際まで上がってきた少女の顔は月の灯りに照らされて、草むらに隠れている若者達からはその表情がよく見えた。  白い頬は熱に浮かされたように紅潮し、灰青の瞳は離れていても分かる程に情欲に濡れ、牙が見え隠れする唇から、唾液が滴り落ちていた。 「発情してやがる……」  そしてケニーは、背負っていたリュックを地面に落とし、上着、シャツと順番に脱ぎ捨てながら、少女に近づいていく。  吸い寄せられるように、まるでそうするのが当たり前のように。  彼女はたぶん、Ωなのだろう。そのフェロモンに反応したのはケニーだけだった。  5人の若者のうち、α性のケニー以外は全員β性だったから。  やがて青白い月灯りの下で、二人の影が一つに重なった。  はじめから恋人同士だったみたいに、最初からここで逢う約束をしていたみたいに。  お互いの身体を弄り合いながら、唇を合わせ、舌を絡め合う。  少女の手が、ケニーのベルトをガチャガチャともどかしげに外し、ズボンがずらされた。  服を全部脱ぎ捨てて、生まれたままの姿で、身体を擦り合い、匂いを嗅ぐ。  そして縺れ合うように、水際に倒れ込み、ケニーが少女を組み敷いた。  水の跳ねる音がやけに淫靡に響き、熱の籠った空気が隠れている若者達のところまで流れてくる。  その熱にあてられそうになる。 「今のうちに逃げるぞ」  一人の若者が言った。 「え、でも……」 「あの狼達は、あの娘を狙っていて、俺達に気づいていない。逃げるなら今しかないだろ」  暗がりに潜んでいる狼達は、愛し合う二人から距離を保ち、様子を窺っている。  獲物を横取りするチャンスを狙っているようだった。

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