10 / 127

第10話

僕は何も知らなかった。 集会の件、何も知らされていなかった。 それなのに、生徒の間では、教師の間では、生徒会内の間では、僕のせいになっていた。 集会が始まらない理由。 集会の内容が決まっていなかった理由。 生徒をまとめられなかった理由。 全ての責任を押し付けられた気分だった。 靄が広がり、霧がかかっていく。頭がぐちゃぐちゃになって、黒く染まっていく感覚に陥っていた。 その集会があった放課後、僕は生徒会室の目の前にいた。密かにそっとドアを開けようとした。 取り敢えず、謝ろうと思ったのだ。 知らなかったけれど、聞いていなかったけれど、非はないと思うけれど、僕は謝ろうと思った。 だから、ドアを開けて、頭下げて、それでも知らなかったことを告げて、円満に終わらせようと思っていたんだ。それなのに、どういう訳か、僕の悪口が聞こえてくる。 「一青は何をやってるんだ。今回の集会は彼奴が仕切る予定だったはずだろう。」 「やはり無理があったのでは?」 「一青君には、無理だったんじゃないかな?仕事だってここ最近遅れて提出してるんでしょ?提出期限に間に合わせられない子に庶務なんて務まらないよ。」 僕は提出期限に間に合わなかったことなどない筈だ。それどころか先輩の仕事も手伝っていた。 一体、何がどうなっているんだ。僕の功績は何処に行った。 そもそも、集会は生徒会全員でするのが鉄則だった筈だ。 それなのに、僕1人に押しつけようとしたんだろ? ありえないだろ。 仕事してないのはどっちだよ。 お前らはここ最近何も仕事してないじゃないか。 僕が悪いのか? それとも僕にもっともっと仕事やれって言うのかよ。 …ざけんじゃねーよ。 こちとら仕事三昧だっつーの。 いつサボったよ。 ほんっとに、俺は何に憧れてたんだ。 馬鹿みたいだ。 こいつらただのポンコツじゃねーか。 人に責任擦りつけて、仕事押し付けて、人気だけは自分らの物ってか? あぁ、本当に馬鹿だな。 「一青、辞めさせるか…。」 カチンときた。 何かが切れた。 張り付けていた仮面が壊れた。 じわじわと目に見えぬ怒りが溢れ出した。 「ふざけんな…。ふざけんな。ふざけんなふざけんなふざけんな。ざけんじゃねーよ。」

ともだちにシェアしよう!