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第15話
俺と夏乃、そしてもう1人の男、瀬戸真斗(セト マサト)は同中である。
夏乃が不良を止め真面目っ子になった時、真斗は怒りを狂わせ夏乃に襲いかかったのをよく覚えている。
しかし、夏乃は真斗の攻撃をさらりと避けると、今後俺に関わるなと冷たく言い殴り飛ばした。
俺は夏乃についた為必然的に不良も止めた…
それに反して真斗はどんどん裏社会のトップへと成り上がって行った。実際、御家も裏社会に通じる一家。仕方ないと言えば仕方ないだろうが。
今更、この2人を引っ付けてどんな化学反応が起こるのだろうか。恐ろしくて見ていられない。
「よお、真斗。久しぶり。」
「…お前、俺に近づくなって言っときながらどんな面下げて来やがった。」
相変わらずの赤髪は変わっていないが、しかし背が伸びたかもしれない。
夏乃とどっこいどっこいだった背も今は伸びて、ゆうに夏乃を超えている。因みに俺は真斗より2、3センチ大きい。夏乃はつまり背が小さい…。
「おい、多々。余計な事考えてねぇよな?舐めてんのか。殺すぞ。」
普通だった。夏乃の背丈は普通だ。そして、ガンの飛ばし方は昔と変わらず怖い。
「んで、真斗。俺と遊ぼーぜ?久々に喧嘩してぇ。」
「…なら俺が相手になってやる。あの時、世話になったしな。俺は昔とは違うんだ。」
「お前、俺を殴れんのか?」
はっと笑った夏乃に真斗は殴りにかかる。さっと避けて夏乃は真斗に腹パンを食らわせる。
真斗は昔、夏乃の忠犬だった。いや、忠犬は可愛く言い過ぎか。どちらにしても真斗は夏乃相手に本気にはなれない。
今だってそうだろう。
あの真っ赤の髪がその証だ。
「なんで…、くそっ。俺は、俺はあんたに裏切られたんだ。」
この忠誠心の発端はなんだったか。まだ背の低かった真斗を夏乃が助けた所から始まったように思う。
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