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第20話
『いつまでそんな不良のような真似事をしているつもりだ。良い加減にしろ。兄があれ程優秀なのに何故お前には出来ない。いいか、吹雪には重役の席を与えるつもりだ。弟のお前が兄の足を引っ張るなよ。』
ーーうるせぇよ。黙れ。いつも無関心のくせに。たまに口を開けば吹雪、吹雪って、うるせぇんだよ。ーー
『夏乃。好きにしろとは言ったが、喧嘩しろなどと言っていないだろう。そんな事すぐに辞めなさい。』
ーー兄さんは変わったな。昔は父さんに逆らってたけど結局は言いなりかよ。昔はまだ…。くそっ、ムカつく。なんだよ、なんなんだよ。ーー
うるせぇ、俺に指図をするな。
うるせぇ。
くそっ、むしゃくしゃする。
父さんも兄さんも嫌いだ。
手を強く握り締める。
ガチャリとドアの開く音がした。
それでハッと意識を戻った。
「起きたか。」
入ってきたのは俺を助けた男だった。先程とは違いスーツを着ている。ここまでスーツを着こなす高校生もなかなかいないだろう。
「怪我の容体は?」
「肋骨と腕の骨がやられてましたね。後は目立った傷はありません。強いて言うなら擦り傷と打撲が少々。」
「そうか。飯食わせたか。」
「いえ、まだ…。」
「翼、作れ。」
「私に料理ができるとお思いですか?」
「…敬吾でも呼べ。」
「はぁ…、分かりました。電話を入れてきます。」
眼鏡はドアの向こうへ立ち去って行った。この目の前の男を眼鏡は凄いと言っていたが、料理は出来ないのか。完璧なんかじゃないんだな。因みに俺は料理くらいできる。
「ガキ、名前は。」
「はっ、お前に名前なんて言うかよ。それにガキじゃねぇ。」
「はぁ、ガキと呼ばれたくなければ名前くらい言え。」
こいつはいいとこの坊ちゃんだろ。どうせ、俺の家も知ってるはずだ。
『その格好で絶対に本名を明かすなよ。その格好をしている限り、お前は一青の人間ではない。』
父さんの声がした。
「俺は…、冬乃。冬乃だ。」
ポロリと口から出たのはたまに使う偽名だった。
無意識だった。
結局は俺も父さんの言いなりってわけだ。
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