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第23話

一言で言うなら美味しかった。 久々にまともな飯を食ったのもあるが、高級料理店でもなく、家のシェフでもない、普通の手料理を食べたのは久しぶりだった。 味噌汁は亡くなった母さんがたまに作ってくれていた。 母さん、結由正しい家だったのに家事するのがすきだったからな…。 懐かしい味。 あの頃はまだ父さんも兄さんも…。 「どう?美味しかった?これでも料理に関してはそこら辺の奴らより上手いはずだよ。女の子にもよく褒められるんだよね〜。まぁ、あんまり作ると女の子に悪いから基本は生徒会連中にしか食べさせないんだけどね〜。」 「…別に。味噌汁、欲しい。」 「そんなに味噌汁好きなの?」 「母さんが作ってくれたから。」 「偉く、素直になったな急に。」 頭を撫でられる。そう言えば、昔は兄さんも頭撫でてくれたな。懐かしい。 「どうしたんでしょうか。頭なんか撫でたら振り払いそうなのに。」 「確かに〜。やっぱり俺の料理って凄いのかな〜。ここまで美味しそうに食べてくれたら作ってあげる気にもなるよね〜。誰かさん達とは違って〜。」 「美味しいとは言っているでしょう。」 「俺は全身から美味しいって言って欲しいの〜。この子みたいに。そう言えば、この子の名前は?」 「冬乃だ。」 「へー、女の子の名前みたいだね〜。冬乃君、大丈夫?」 「熱い…。」 「ん?熱い?」 身体中が熱くなる。モワモワする。ぐにゃりと視界が回る。 「もしかして…。」 チャラ男の手が額にあたる。冷たくて気持ちがいい。 「熱‼︎熱出てる。 」 「そう言えば、解熱剤貰ってたな。熱出てたからか。」 「ああ、なるほど。」 「なに呑気に思い出したように言ってるの。普通わかるでしょ。ああ、喉に通りやすいお粥とかうどんとか作ればよかった…。って言ってる問題じゃない。冬乃君、薬飲める?」 「飲める。」 チャラ男の持ってきた薬と水を一気に喉に流す。苦味が少し喉に広がる。美味しくない。 「取り敢えず、寝かせよう。翼君、ポカリと冷えピタとか買ってきて。」 「あっ、はい。」 「医者呼ぶか?」 「たぶん、寝かせれば大丈夫。明日までに熱下がらなければ呼んだ方がいいかもしれないけど。冬乃君、横になれる?」 力なく頷く。今すぐにでもベッドに沈みたい。ただ、傷の痛みですぐには横にはなれない。ゆっくりと体を落としていく。寒いのに熱い。寒い…。熱い…。ぷつりと光が途切れた。

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