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第26話
「お前ら何やってんだよ。」
後ろからの声に集中が切れる。画面の向こうにいる車に乗った赤い帽子のおじさんが谷から落下した。
「うわぁぁぁ、何やってくれるんだよ。あと少しで勝てたのに。」
「冬乃君、それよく言えたね。11位だったけど。」
「ちげぇ、これから徐々に順位を上げていく予定だったんだ。」
「もう、ゴール近かったけど?」
「うるせぇ。」
数十分前、暇だ暇だと思い、ベッドの中でごろごろと転がり回っていた。携帯もないんじゃ連絡どころか暇潰しも出来ない。
この家に来て3日は経った。それはもう1日2日はずっと寝ていたのだから寝るという作業が苦行でしかない。
そんな時、現れたのがゲーム機を持ったチャラ男だった。チャラ男は言った。
『どうせ暇ならゲームしよう?』
俺は答えた。
『はぁ?…まぁ、どうしてもってんなら付き合ってやってもいいか。』
俺は暇だった。
だから、チャラ男に付き合おうと初めて俺はゲームのコントローラーを持った。
もう一度言う。
俺は初めてコントローラーを持った。
テレビゲームをするのは初めてだった。
つまり、初心者だ。
そもそもあの家にいる時にゲームをする機会なんてなかった。
厳格な父はもちろん、真面目な兄もゲームをした事があるのかさえ、怪しいところだ。
しかし、チャラ男は容赦なく俺から一位を掠め取る。それどころか数度繰り返しても勝つことは疎か、ゴールすることさえもできなかった。
「私の部屋で何をやっているんですか。」
「ゲーム…?」
不思議そうにこちらを伺う能天気男と怒りを表す眼鏡。
そう言えば、ゲーム機をテレビに繋げる為に元々繋がっていたコードを取ったり、ゲームのソフトを選んでいる時に散らかしたりしていた事を思い出す。
ついでにこの家が男の、巽っつう俺様男の家ではなく、眼鏡の家だった事も思い出した。
「ゲームをするのは構いませんが、私の部屋を散らかさないで下さい。誰が片付けると思っているんですか。」
「えー、それはお手伝いさんとかでしょ〜?」
「私も片付けているんですよ。」
「まぁまぁ、そんなにカリカリしないで一緒にゲームしようよ。ね?翼君。」
「私がゲームなんてすると思っているんですか。」
「はっ、坊ちゃんはゲームはやらねぇってか。逃げんのかよ。」
「そんな子供のような挑発に乗るとでも?」
「はっ、これだから眼鏡は…。」
「眼鏡は関係ないでしょう。いいです、眼鏡の力をとくとお見せしましょう。」
「翼君、結局挑発に乗ってるじゃん…。それに眼鏡の力って何…。雫はゲームする?」
「うん。」
結局、俺と眼鏡とチャラ男と能天気男がゲームをすることになった。
俺様男は空気を読まずに仕事をしている。
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