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第30話
くわっと欠伸をして、周りを見渡した。
テレビの電源はいつの間にか切れていて、暗い静粛が部屋に満ちている。
だが、微かに聞こえる鼻息に誰かが寝ているのはわかる。だんだんと暗闇に目が慣れてきて、体を起こすと、パサリと毛布が落ちた。
俺はソファで寝かされていた。
眼鏡はそのまま机に突っ伏して、チャラ男はソファの片隅で座るように、能天気男は壁に体を預けて寝ている。
全員に毛布がかかっているのはここにはいない俺様男のおかげだろうか。
ふと、ベランダの明かりが漏れているのに気付いた。
もしや、と思い近づくと思った通り俺様男がそこにはいた。
月明かりに照らされた男の顔は更に際立っている。
「お子様が起きるには少々早いぜ。」
「お子様じゃねぇよ。それにお前こそ年齢的にやばいだろ、それ。」
手に持っている白く細長いそれを見て、言葉を放つ。先からは赤い光が注いで煙が群がる。
「いんだよ。それよか、随分と馴染んだな。あいつら基本的にあんなとこで雑魚寝なんてしねーんだぞ。余程お前といるのが楽しかったんだろうな。」
「ゲームに夢中なだけだろ。」
「まっ、否定はしないがな。でも、お前も少しは気分転換にでもなったんじゃ無いか?」
「は?なんでだよ。…なんか知ってんのか。」
男を睨みつける。こいつも財閥の人間だ。俺が一青の人間だと暴露たらまずい。
「しらねーよ。」
ホッと息を吐く。
「じゃあ、なんなんだよ。気分転換なんて、俺が気分害してたみたいじゃねぇか。」
「顔見りゃ分かる。お前の言う眼鏡も昔そんな顔してたしな。今はあんなんだ。喧嘩以外にもストレスは発散出来るし、気分なんか変わる。それに一緒になって笑える仲間がいれば楽しいだろ。」
「…別に。」
「お前も仲間でも作ればいいんじゃねぇか。お前ならすぐにできんだろ。まっ、出来なかったらあいつら貸してやるよ。」
「なんだよ、それ。」
「なんだ?楽しくなかったか?」
「…し…た。」
「あ?」
「何でもねぇ。」
…楽しかったよ、久々に。
――
※白く細長い先から煙が上がっている理由はきっと棒付き飴を舐め過ぎて摩擦で炎が出ちゃっただけなのかもしれない。
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