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第31話
息がし辛くて、何処にも居場所を感じられなくて、ずっと迷子のように歩き回っていた。
何処に行けば自分は認められるのか。
分からなかった。
クソみたいな奴らを殴れば少しは気が紛れた。
喧嘩をしたら忘れられた。
自分が何を探しているのか、忘れられた。
でも、焦燥に駆られ、いつも何かに追われるような感覚だった。
だから、久々に時を忘れて、気楽に声を上げて笑った。
焦りも苦しみも何も感じず、ただ馬鹿みたいにテレビに向かって遊んだ。
それが何よりも楽しかった。
ただ目の前の男に言うのも癪だ。
ふいっと顔を背けていると、頭に重さを感じた。
俺様男の方をちらりと見ると、笑いを堪えて俺の頭に手を乗せていた。
「なんだよ。何笑ってんだよ。」
「素直じゃねぇな、お前。」
微かに漏れる男の笑顔に、ドキッとした。
胸が熱くなる。
って俺は、今何を考えてた。
ぐりぐりと頭を押さえる俺様男の手を振り払う。
「お前、顔赤いぞ。照れてんのか?」
「うっせ‼︎寝る‼︎」
ベランダのドアを閉めて中に入る。
折角だからこの前から使っている部屋のベッドで寝た。ふかふかのベッドで寝心地の良い。
それなのに、ふっと入ってくる俺様男の顔。ぶんぶんと頭を振って顔を枕に埋める。
「何考えてんだよ、俺は。ばっかじゃねぇの。」
八つ当たりのように毛布を手に取り、自分にかける。
明日にはここから出てやる。
傷は塞がってんだ。
くそっ、馬鹿野郎‼︎
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