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第32話

翌朝、完璧とは言えないが普通に歩き回れるくらいには回復した。 気合を入れて、よしっとドアを開ける。 「おはようございます、冬乃。よく眠れましたか?私は初めて雑魚寝というものをしました。感動ものですね。」 眼鏡のトンチンカンな感動は置いといて、俺様男の元に行く。 「おいっ、傷は治った。帰る。」 「…ん、ああ、そうだな。」 「えっ!帰っちゃうの〜?冬乃くん。面白かったのに〜。」 「さみ、しい。」 「一応、世話になった。」 「お礼、言えたんですね。」 「おいっ、馬鹿にしてんのか。」 眼鏡の一言にムカついて足を踏む。可憐に避けられたが。 「携帯返せ。迎え呼ぶ。」 「そう言えば、携帯預かってましたね。はい、どうぞ。」 やっと帰ってきた携帯を起動させると、恐ろしい程の通知が来ていた。 真斗だけで100件、多々が20件、それと兄さんから1件。その他不良仲間含めれば300件はゆうに超えている。 「うわっ、凄いことになってるね。通知。」 「ああ…。」 取り敢えず、真斗と多々、兄さんにだけ返信する。すると、真斗から即長文で返信が送られてきた。 『今、すぐ迎えに行きます。』 文章は読まず、最後の一言だけ確認して電源を落とした。 「ねぇ、冬乃くん。別れる前にさ、これあげる。」 「なんだこれ。」 「学園祭のチケット。 俺たちのね。どうせ冬乃くんは進路決められなくてストレス溜まってたんじゃない?秋にあるから友達と一緒に来なよ。 んで俺たちの高校来なよ。冬乃くん来てくれたら特別に可愛がってあげるからさ。」 「んだよ、それ。馬鹿にしてんのかよ。」 「してないしてない。来てくれるの楽しみに待ってるから。」 チケットには北上白鷹学園と書かれている。兄さんが通っていた学園。 「冬乃が来るのでしたら、もっと盛り上がる企画を立てなければなりませんね。巽、帰ったら仕事です。」 「ああ。」 俺様男はこちらをふっと見つめると一言ふっと呟いた。 「来いよ。」 笑った顔にどきりとしたのは気の迷いに違いない。 「じゃあ、またな。」 無意識に出た言葉に、俺はこいつらにまた会いたいのだと思った。ただ、突っ込まれるのが嫌だから急いで部屋から出た。

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