33 / 127

第33話

豪華絢爛なマンションの側には見慣れた車が一台。後部座席にいるのが真斗だと分かる。 「あっ、夏乃さん!今まで何してたんですか。心配してたんですよ。 メールも返信来ないし、いくら電話かけても出ないし…。 喧嘩吹っかけてた男共捕まえても、後から出てきた男とどっか行ったっていうしで。俺、すげぇ心配したんすよ。」 「ああ、悪い。」 「ああ、悪いじゃないですよ。俺、心配で夜も眠れなくて…。でも、夏乃さんはなんか機嫌良いですよね。やっぱり何かしてたんですか。」 「何もしてねーよ。どっかの馬鹿に看病されてただけだ。嫌、遊び相手になってただけか。」 「えええ、何なんですか、それ。俺だって夏乃さんのお世話したかったです。」 「おいっ、そんなことどーでも良いんだよ。多々ん家に行け。」 「多々さんも相当怒ってましたよ。」 「多々が俺を怒れるかよ。」 あの意気地なしが俺に刃向える訳がない。 その後、何も言えないくらいに論破され、冷たく無表情で怒られることをこの時の俺は考えもしなかった。

ともだちにシェアしよう!