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第34話
翼side
またなと言葉を残し、あの不思議な少年は部屋から出て行った。
「あ〜あっ、帰っちゃったね。面白かったのに〜。」
「でも、またなって言った。また、会える?」
「会えますよ。きっと。」
彼を見ていると昔の自分を思い出す。家に帰りたくない日々に、ストレスを解消するように夜の街で人を傷付けた。
相変わらずの両親は俺の事などどうでもいいようで、傷ついて帰ってきても何も言わなかった。それを止めたのが幼馴染の巽と、街で一番強いと言われていた雪さんだった。
「何を物思いに更けてんだ?」
「いえ、彼を見ていたら昔のことを思い出して。」
懐かしくも恥ずかしい記憶だ。
「ああ、お前は荒れていたからな。あの日だけで腹一杯になるぐらいの青春をしたな。」
頬が赤くなりふいっと顔を背ける。人の黒歴史をそう簡単に語らないでほしい。
「昔のお前は今と違って髪は染めるわ、何を言っても聞かないわ、喧嘩はするわで大変だったな。俺の気持ちはお前には分からないが口癖だったな。」
「なになに〜?翼くんの反抗期〜?その話凄い気になるんだよね。その時期の翼くん、俺と雫は知らないし。」
「何でもないですよ。よくある反抗期になってただけです。」
いろいろあったし、今なお両親とは分かり合えていない。それでも自分の進む道は決まった。だから、あの時期は意味あるものだったと言える。
「みんな、別々になってた。敬吾も反抗期なってた。」
「ちょっ、雫?それは言わない約束だったよね。」
「なんだ、聞いてないぞ。敬吾。」
「敬吾、今より女の人と遊ぶの多かった。」
「みんな、いろいろあったんですね。でも、きっともう大丈夫でしょう。後は…、萌斗が戻ればいいのですがね。」
「もう直ぐあいつも帰ってくるだろ。」
未だに日本に帰っていない幼馴染に想いを馳せる。いつだって自分達の中心で可愛くて守るべき対象の彼。きっと彼が帰って来れば本当の意味で自分達は昔のように一つになれる。
そう信じていた。
翼side end
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