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第35話
三ヶ月後ーー
多々の家で寝転がりながら漫画を読む。
物語では文化祭の準備で忙しなく動く主人公の姿。そこでスッと流れるように思い出した。
「文化祭…。」
「へ?何か言った?」
「いや…別に何でもねぇ。」
チャラ男に貰ったチケットは確か財布の中にしまったはず。ちらりと財布の中を見ると、案の定皺くちゃなチケットが入っていた。
『10月5日 10時〜』
と書かれるチケットに明後日かと声を漏らした。
「何々?何が明後日なんだ?あれ、それって吹雪さんが行ってた学校の文化祭のチケットじゃん。何で夏乃が持ってんだよ。」
そう言えば、兄さんの学校だったな。
「夏乃、それどこから盗めてきたの?」
「盗んでねーよ。貰ったんだ。」
「それなら俺も行っていいか?」
「何でだよ。俺は行かねーぞ。行くなら1人で行ってこい。」
「それは嫌だよ。だって、1人で文化祭とか寂しい人みたいだし、夏乃が貰ったチケットだろ。お前が行かなくてどうすんだよ。じゃ、明後日の11時にいつもの駅で待ち合わせな。」
「勝手にしろ。」
この調子じゃ引き摺ってでも俺を連れて行こうとするだろう。
多々は基本は俺に忠実だが、たまに強引に言うことを聞かせようとする節がある。今回もそんな感じの雰囲気だ。ばっくれても一瞬で探し当てられて連れて行かれるのが関の山だ。
溜息をつきながら、あの夏の日を思い出した。
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