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第40話
はいっ、はいっと服を押し付けられる。
「着方分からなかったら言ってな。教えるから。」
これは着ずに出たら無理やりにでも着せられるパターンだ。多々と同じ匂いがした…。ため息をついて服を眺める。
「執事服に新撰組にホスト風のスーツに甚兵衛に…メイド服。」
無言でメイド服を投げ捨てた。
さて、どれを着るか。
何を着るか。
一番マシなやつは執事服だろうか。
新撰組も甚兵衛も残念ながら着方がいまいちよく分からないし。ホストは却下だ。服を広げ、裾を通す。
「なんか、違う…。」
なぜか…。
「あー、執事は高身長の人用だから気ない方がいいかもしれないな。」
外からそんな声が聞こえ、取り敢えず上着を投げ捨てた。ホストは論外…。わんちゃん甚兵衛なら着れるだろうか。
執事服を脱ぎ、甚兵衛に手をかける。
試行錯誤しながらきた甚兵衛はやっぱり違う、思っていたのと違う、というか子供っぽい…。
もう一度、服を投げそうになった。だが、服を脱ぐ前にシャーとカーテンが開いた。
「そろそろ着替えた?おっ、似合ってんじゃん。小学生みたいだな。」
無言で腹を殴った。
「おいっ、眼鏡。さっさと写メ撮ってって…。お前なんだその服。」
「海賊だそうです。」
眼鏡はそのまま、海賊の船長が来ていそうな服である。その右手には眼帯が握られている。
「なんで眼帯つけなかったんだよ。」
「眼鏡は私の命です。眼帯をつけたら外さなければならないでしょう。」
どんだけ眼鏡大事なんだよ。
「さて、写真撮るぞー。」
甚兵衛を来た男と海賊服を来た男。ミスマッチ過ぎて笑えない。
「テーマは祭りを荒らしにきた海賊だな。」
意味がわからない。
しかし、そのまま写真を撮られた。記念にと貰った写真を眺めても、やはり意味不明なコスプレ2人が写真に写っているだけだ。
「おいっ、眼鏡。着替えるぞ。」
「あー、待てまて。それ、着てていいから。うちのクラスの宣伝よろしく。」
「ふざけんな。おいっ、眼鏡。着替え…。って、眼鏡どこ行った?」
辺りを見渡すと眼鏡は教室の隅でどこかに電話していた。
「すみません、冬乃。急用が出来たのでここから離れることになりました。代わりに時雨を呼びますので安心してください。」
何に安心しろと言うのだ。時雨とはチャラ男のことだ。安心なんて出来やしない。
しかし、ものの数分で、チャラ男は眼鏡と入れ替わるように現れた。
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