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第43話
能天気男は未だにぽーっとどこか遠くを見つめている。俺はその場に座ることなく突っ立っていた。
よく考えると、能天気男と2人でいるのは初めてかもしれない。チャラ男とか眼鏡とか必ず側にいたから会話をせずとも困りはしなかった。
やはり自分から声を掛けるべきなのか。
はぁ、と溜息を吐く。
それに反応したのか能天気男はひょこりと顔をこちらに向けた。
「おい…で?」
じーっとこちらを見つめる能天気男。つまりはこっちに来いという事だろう。仕方なく能天気男の目の前に行く。
ポスポスとソファを叩く。ソファはそれなりに大きい。だが、大柄の男が既に寝転がっているところに座るには窮屈過ぎる。
「嫌に決まってんだろ。」
「ん、大丈夫。」
何が…
話が噛み合ってない。
そう呆れているところ、ぐいっと腕を引っ張られた。どすんとソファに倒れこむ。
「いってぇ…。何すんだよ。」
起き上がろうと腕に力を入れる。が、何故か起き上がれない。能天気男の腕が俺の腰に巻きついて取れないからだ。
「ん、抱き枕…。あったかい。」
「誰が抱き枕だ‼︎」
ギャーギャー暴れるものの、その腕は一向に外れない。
スースーと寝息をたてているのに緩まないのは何故だ。何度目かの溜息をつき、仕方なしと体をソファに預けた。
何だかんだ言ったが、学園祭を満喫した。飯も食ったし、体も少し動かした。
涼しいクーラーが効く中で、人肌がやけに温かい。
心地いい…
静かな空間。
ああ、何でこいつといるとこんな眠くなるんだ。
おっとり、し過ぎなのが悪いんだ…。
ああ、落ちる…。
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