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第45話
日が落ち、外は真っ暗だった。
連れてこられたのは屋上。
そこには誰もいない。
ただ、ざわざわと騒がしい。
下を見下ろすと、そこには沢山の人で溢れかえっていた。
「学園祭、回ったんだろ?」
隣には俺様男。ニヤリと笑った顔が光に照らされる。無意識にコクリと頷いていた。
「変な奴が山ほどいただろう。いつだってそうだ。お坊っちゃんが通うこの学園には変な奴らが集まる。
同じような環境で育った。だが全く違う奴らだ。
坊ちゃんでも、家では大人の言いなりでも、ここでは馬鹿したって大抵のことなら許される。普通の馬鹿な高校生にだってなれる。
お前のその苛つきを解消できるかわからねぇ。でも、俺がいる限りお前は1人にはならねぇよ。」
振り払えなかった。
頭を撫でられているのに。
いつもなら振り払えるのに。
ただ、男の意地が悪そうな笑みだけが俺の目には映った。
「巽。俺、ではなく俺たちでしょう。全く貴方は。」
やれやれと首を降る眼鏡。目が合うとフッと笑った。
「いいですか、冬乃。これからちゃんと勉強するんですよ。勉強しないと受かりませんから。それと、その頭もどうにかすること。生徒会に入るならもう少しましな格好をしなさい。時雨みたいな格好は勿論論外ですけど。」
「ちょとぉ、その言い方はなくない?しかも、冬乃君を生徒会入りさせる気満々だし。」
「何か問題でも?冬乃とはまだゲームの決着がついてませんし。それに、私は彼を気に入りましたから。時雨は反対ですか?」
「誰もそんなこと言ってないでしょ〜。冬乃君。受からなかったなんて言葉聞きたくないからね。」
「俺も、待ってる。冬乃、待ってる。」
アホかよ、こいつら。俺みたいなの生徒会に入れたら学校おわんだろ。
「んな訳だ。お前は大人しく勉強しとけ。お前の居場所は俺らが作っといてやる。待ってるぞ。」
頭を再度撫でられる。
今度は振り払うことが出来た。
「あっ、花火‼︎」
打ち上がった花火は夜空に咲き誇った。
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