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第47話
庶務君が狼に戻った後ーー
また、元に戻る。
殴って、蹴ってを繰り返す。
やられたらやり返す。
ムカつく奴は容赦しない。
「夏乃…。」
多々が心配そうに呟いたのを俺は気づかないふりをした。
多々と真斗を連れて繁華街に出た。案の定、不良に絡まれる。手始めにとそいつらを片した。
身体が思うように動かない。鈍っていやがる。それでも、また昔のように力が出せるように、喧嘩を止めなかった。
そんな状態で、どっかで噂を聞いた馬鹿どもが俺たちを取り囲んだ。3対20というところか。また殴って蹴っての攻防戦が続く。
俺は全てを忘れる勢いで喧嘩をし続けた。
むしゃくしゃするのは元々だ。
見えない何かじゃない。
裏切られたことが許せないだけ。
他には何もない。
あいつらを信じた俺が情けないだけだ。
「夏乃、夏乃っ。やり過ぎだ。」
多々の声でハッとする。
下を見ると組み敷いていた男の顔がぼろぼろになっていた。俺の拳も血で塗られている。はぁはぁと息が上がっている。
「夏乃、今日は帰るぞ。お前、このままじゃ人1人ヤっちまう。」
「多々…、俺に指図すんな。」
「夏乃、俺を睨みつけても意味ねぇよ。今日はお前を死ぬ気で帰す。殴られたって、家に帰すから。」
ああ、むしゃくしゃする。この怒りはどこに向ければいい。殴っても殴られても痛みすら感じない。どうすれば、この胸の痛みを忘れることが出来る…。
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