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第50話

夏乃を知る同中に一斉メールを送り、俺も繁華街を走り回る。 同中で番長的存在だった夏乃を知る奴は多い。真斗と同じように慕ってる奴らもいる。 繁華街にいるなら、すぐに見つかるはずだ。小さな路地裏を1つずつ見ていった。 結果から言えば、夏乃はすぐに見つかった。血塗れな姿で。側には大人数の人間が意識を失って倒れていた。 「な、つの…。夏乃‼︎」 夏乃自身も殆ど意識がない。ただ、意識が朦朧とする中、俺を殴ろうとしてきた。 「そんな、へなへななパンチじゃ当たるわけねぇだろ。」 「た、た?」 「帰るぞ。」 「どこにだ…。どこに帰ればいい。俺は…。」 「夏乃…。決まってんだろ。俺たちのところにだよ。俺も吹雪さんも真斗もお前を探してる。」 「違う…。」 「違くねぇ。なぁ、頼む。そろそろ認めてくれないか。俺はちゃんとお前と仲間になりてぇ。」 「仲間…?」 「お前に守ってもらうばっかじゃ嫌だって言ってんだよ。お前は無意識に俺らを守ろうとしてる。違うんだよ。そうじゃねぇんだ。守ってほしいんじゃねぇ。隣に並びてぇんだ。お前の背中を守れるようになりたいんだよ。」 「んなの…とっくになってんだろ。」 「なら、聞かせてくれよ。お前が悩んでること教えてくれよ。一人で溜め込むなよ。何に苦しんでる、何に悲しんでる、何に苛ついてる。全部、ちゃんとお前の口で教えてくれ。」 「多々…?」 もう殆ど開いていない目で夏乃はこっちを見る。だが、その眼は間違いなく俺を見ていた。 「多々、なんでだろーな。空っぽなんだ。」 夏乃はぽつりぽつりと言葉を漏らす。無意識にほろりと言葉を吐き出す。 「書記の…さ、能天気男はさ、いっつも何考えてんのかわかんねーんだ。全然喋んねぇし。 でもさ、俺がお茶入れようとしたらいっつも手伝ってくれんの。んでさ、毎日会うたびに飴玉くれんだよ。俺、子供じゃねぇのにな。 あいつといるとホッとするんだ。眠くなる。凄くあったかいんだ。 会計のチャラ男はいっつも横に親衛隊の奴連れてんの。外でりゃ女女だよ。いろいろ緩いんだよ。でもさ、あいついろいろ教えてくれんの。 仕事のこととか。何気に一番面倒見がいいんだぜ。あんな顔してるくせに意味わかんねぇよな。 あいつの作る味噌汁、すげぇうまいしさ。母さんの味噌汁みたいな味がすんの。なんでだろうな。 副会長の眼鏡は、ネチネチうるせぇし、眼鏡が恋人かっつぅくらい眼鏡が好きなんだ。眼鏡の悪口言ったらさ、すげぇ切れるんだぜ。馬鹿だろ? でもさ真面目なんだ。気持ち悪いくらい。 んで、唯一俺を叱るんだよ。ここが違いますよってよ。でもさ、ちゃんと出来るとよく出来ましたって褒めてくれんだ。ただ、負けず嫌いだから、まだまだですけどって絶対言うんだけどな。 俺様男は、会長は…、…、 …すんげ、俺様でさ、意味もなく殴るし暴力的なんだよ。のくせになんでも出来てすげぇムカつく。ムカつくんだよ。 あいつにいいとこなんてねぇ。俺の頭よく撫でてくるし。小せぇなってよ。 でも、助けてくれたんだ。助けて、くれたんだよなぁ。 俺様で自分勝手ででも、初めて俺、憧れたんだよ。 馬鹿だ、本当に馬鹿だ。 …生徒会行ったら、俺はいらないって話してたんだ。あいつら。辞めさせるってさ。 むかつく、むか、つくんだ。ははっ、はっ、はぁはぁ。」 夏乃は泣いていた。涙を溜めて、溢れるように泣いていた。 「いてぇ、いてぇや。」 夏乃はそのまま崩れるように気を失った。 多々side end

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