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第51話

目が醒めると白いベッドの上。起き上がろうにも節々から痛みが。仕方なく顔を横にずらした。 スースーと寝息を立てる多々を見て、昨日の夜のことが蘇る。確か、物凄く恥ずかしいことをこいつに言った気がする。その記憶をかき消すように多々を叩き起こす。 「うわっ、なんだ?あっ、夏乃!目が覚めたんだな。よかった。」 心底ホッとした。 そんな顔でこっちを見られても、困る。 多々を叩いた手をそっと下ろす。 「お前、いい加減にしろよ。ボロボロになるまで喧嘩して。俺も、吹雪さんも心配したんだからな。」 「は?兄さんが?んなわけねぇだろ。」 「あるんだよ。この病院だって吹雪さんが用意したんだから。」 「それは…世間体を気にしてだろ。」 「それ、本気で思ってんのか。もし、本気でそう思ってんなら最低だよ、お前。」 今まで聞いた事のない低い声に体がピシリと固まる。今までとは比べものにならないくらい怒っている。 「夏乃、俺はそろそろお前ら兄弟の合間に挟まるのは嫌なんだよ。不器用すぎんだよ、お前ら兄弟は。だからな、俺は吹雪さんに殺されるの覚悟でお前に吹雪さんの秘密を話すことにした。」 「兄さんの秘密?」 「ああ、全部で3つある。まず一つ目、吹雪さんは俺にお前の行動を毎日メールするように命令していた。」 俺の行動を?やっぱり、監視でもするつもりで…。 「まぁ、待て。最後まで聞けよ。2つ目は吹雪さんが親父さんに従ってんのはお前に自由にいて欲しかったから。」 「は?んな、わけ。」 「最後‼︎吹雪さんは夏乃、お前のことが大切な弟だと思ってる。」 俺を…?兄さんが…? ありえない…。あり得るわけがない。 だって、兄さんは俺が何をしても顔をしかめるばかりだった。 「夏乃、お前は一回吹雪さんと話す必要がある。それに、ほらっ、ちょうど吹雪さんも来たみたいだ。」 多々の視線の先には兄さんの姿があった。その顔はやはり歪んでいる。 「多々…お前…。」 「吹雪さん、夏乃に思ってることきちんと伝えて下さいね。」 そう言うや否や、多々は病室から出て行った。

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