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第53話
多々side
あの不器用な兄弟はやっと仲直りした。隣には既に退院した夏乃が、久々に制服に身を包んでいた。入院前より幾分と顔色がいい。
「お前、俺を迎えに来なくてよかったのに。」
「迎えに行かなきゃ、お前、また不良に絡まれて学校こねぇだろ。」
「もう、喧嘩は当分しねぇよ。…多々も悪かったな。」
「夏乃が謝った…。今日は槍でも降るのか?」
バシンと頭を叩かれた。
「ばーか。」
互いにクスクスと笑い歩みを進める。
「それにさ、吹雪さんが夏乃のこと迎えに来いって命令されたからな。吹雪さんに命令されたら断れねーだろ。この前の秘密バラしたのこれでチャラにしてくれるらしいしな。」
「兄さんが…か。」
夏乃の顔が緩む。耳まで赤くして、優しく目を細めた。
「あっ、そうだ。お前、いつの間に兄さんとメールのやり取りするようになったんだよ。」
「あー、いつだったかな。吹雪さんが急に俺の前に現れて言ったんだよ。夏乃の動向をメールで送れってな。勿論断ろうとしたけど脅された。」
もともと夏乃のクラスメートって理由で吹雪さんとは顔見知りだったけど。なんかのパーティーで恐ろしい顔でこちらに迫ってきたのだ。
「あの時の吹雪さんは怖かった。ダチを売ってでも自分を守るべきだって思ったよ。でも、まっ、吹雪さんが悪い人じゃないってすぐに気づいたけどな。」
俺だって夏乃の監視じゃないかって最初は思ってたから。
でも、蓋を開ければ
“頬の傷は何故できた”だとか
“表情がいつもより沈んでいる”だとか、
そんな内容を永遠にメールで聞かれた。流石にブラコンだと途中で気づいた。
いや、むしろあの顔でブラコンとか吹いたけど。
「お前はダチより自分の身を案じたのかよ。」
「まあな。ふっ…。」
「あ?なんで今笑った。」
「いや、お前やっと俺のことダチだって認めたと思ってさ。」
そうか、こいつはちゃんと俺をダチ判定してたんだな。無意識に口角が上がる。バシンと頭に衝撃が走る。
「いってぇ。」
「恥ずいこと言ってんじゃねぇ。殺すぞ。」
「なんだよ、ツンデレか?」
「誰がツンデレだ。お前、最近調子乗りすぎだ。」
おっと、これはマジで揶揄い過ぎたか。そのまま一気に走る。
「あっ、おい。」
「俺、まだ死にたくないから〜。」
「くそっ、待て‼︎」
そのまま2人でダッシュで学校へ行く。門に着く頃には息も絶え絶えで、それでまた笑った。
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