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第57話
夏乃と出会ったのは中一の頃。
クラスに喧嘩が強い奴がいると聞いて、興味本位で話しかけたのが始まりだった。
何も最初から夏乃と仲良くしようなんて思っちゃいない。一緒にいて、本当に喧嘩が強いことを知って、なら荒くれ者が多いこの学校でこいつを盾にして生きようと思考を巡らせていただけだった。
でも、ある日、そうそれこそ今日みたいに不良共に囲まれて喧嘩を売られた。その時、俺は1人だった。
いつだか言った通り俺は当時喧嘩はからっきし。誰かの陰に隠れてやり過ごそうとする人間だ。反撃することも出来ず殴られ蹴られ。
痛いのは嫌だとか、いつ終わるんだろうとか、このまま死ぬんじゃないかとかそんなことばっかり考えていた。
息をするのにも限界に達した時、ヒーローの如く現れたのが夏乃だ。無言でこっちを見た夏乃はふっと笑ったのを覚えている。
あれは今でも性格の悪い顔だったと思う。というか、悪役面だった。
そのまま不良どもをぶっ飛ばし呆気なく喧嘩は終わった。
夏乃はヤンキー座りをしてこっちを見つめた。
「お前、俺を盾にするからこんなことになるんだ。俺が喧嘩売られてんの見てんだろ?それなら自分が被害被ること分かっとけよ。」
それもそうだ。言われてハッとするあたり、中学だった俺は相当な阿呆だ。
だが、夏乃といるのが楽しかったのは間違いない。こいつがなんだかんだ言って真面目で、律儀で優しい奴だってことぐらい直ぐに分かったし。
結局俺は、喧嘩に巻き込まれるリスクより、夏乃と一緒にいる方を選んだ。
「俺がもし喧嘩売られたらお前が守ってくれればいい。それだけだと思わないか?」
「…、まぁな。お前くらい俺が守ってやるよ。」
大層なイケメン具合だ。女ならメロメロになっていただろう。
だが残念ながら俺は男だ。メロメロどころか爆笑してた。
ただ、今思うと夏乃はこの言葉のせいで変な重荷を背負ってしまったんじゃないかって思う。
でも、まっ、もういいだろう。夏乃はやっと俺に背中を任せてくれたんだから。
にしても、あの言葉を鵜呑みにする辺り、夏乃も馬鹿じゃないか?俺も相当頭悪いが夏乃も同じくらいの阿呆だ。
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