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第58話

「やっと片付いたな。」 「ああ。」 目の前の不良どもを見つめる。西山も簡単に夏乃が倒した。入院前は喧嘩ばっかしてたから昔の勘を取り戻したんだろうか。昔の夏乃と大差ない喧嘩の強さだ。 ちらりと夏乃を見ていると、いつのまにか男が夏乃の背後に近寄っていた。 「なんだ、あいつ。」 俺たちと同じ制服を身に包んでいる。不良どものように着崩していないし、真面目なよくいる地味な感じの男児生徒。 その手に持つのは…、 スタンガン。 「夏乃‼︎後ろ‼︎」 夏乃が振り返る前にスタンガンは夏乃の体に触れていた。体の力がふっと抜けるように夏乃の体は前のめりに倒れる。しかし、その体は地面に触れることはなかった。 「ごめんね、夏乃君。でもこうしないと君を捕まえられないから。」 夏乃は男児生徒に支えられている。 「お前、だれ…うぐっ。」 いつの間にか目が覚めていた西山に後ろを取られ、地面に叩きつけられた。 「瀬野さん遅いっすよ?」 「ああ、ごめん。ちょっとね、怒りを抑えるのに手こずってね。」 瀬野…?瀬野ってまさか…。薄れゆく意識の中で夏乃が瀬野に抱きかかえられて行くのが見えた。 「瀬野さん、こいつどうします?」 「放っといていいよ。その子には興味がない。いや、リンチにするのもいいかな。西山君に任せるよ。」 「はい、分かりました。」 うっすら残る意識で西山とほかの不良どもに囲まれるのを感じた。それを最後に暗い闇の中へと落ちていった。

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