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第59話

夏乃が拐われた。 早く、助けないと。 でないと、夏乃は…。 夏乃…。 ベッドから飛び降りるも、足に力が入らず、そのまま地面に叩きつけられた。 「いってぇ。」 「そりゃあ、怪我酷いからねぇ。」 「大人しくしてなさい。」 「は?」 聞き覚えのある声に顔を上げた。目の前には生徒会の連中。 なんでだ?夢か?いや、さっき痛みが…。 待て、そもそもここはどこだ。 当たり前のようにベッドから這い出たがここがどこなのか把握していない。 「取り敢えず、ベッドに戻って下さい。」 そう促され、会計の肩を借りてベッドに戻る。 「さて、聞きたいことがあるなら聞いてください。」 「ここは?」 「ここは私の家です。因みにここに連れてきたのは巽です。」 「なんで、俺を。」 「偶然通りかかったらお前がリンチにあっていた。お前には聞きたいこともあったから助けた。それだけだ。」 腕を組んで壁に寄りかかっていた会長が口を開く。聞きたいことなんて、分かっている。だが…。 「…聞きたいことって何すか。」 敢えて俺はそれを聞いた。 「冬乃、いや夏乃の事だ。」 「夏乃を裏切ったやつに話すことは何もねぇ。」 「それはあいつの勘違いだ。」 「勘違い?例えそれが本当でもお前らは夏乃を放置してただろう。なんの釈明もなく放ったらかしたってことは結局どうでも良かったって事じゃねぇのかよ。そもそも、あいつは…。」 言葉を発しようとしたがやめる。勢いで言いかけた言葉はきっと俺が言っても意味がない。 「野原多々君だったよね?俺らも事情話すから、君に何があったか教えてくれないかなぁ?」 「何って…。夏乃‼︎」 会計の言葉に思い出す。生徒会と話している暇なんてない。早く、夏乃を探しに行かないと。 「まぁ、落ち着いて。やっぱり冬乃君に何かあった?」 「冬乃?」 「ああ、ごめん。冬乃は夏乃君の偽名だったね。」 あ?なんで、偽名なんて…。 いや、そんなことより夏乃だ。 「野原君。冬乃に何かあったんですね?教えて下さい。」 「瀬野に攫われたんだ…。」 「やはり、巽が言った通りだったのですね。」

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