116 / 127
巽大和の話③
繁華街で最近、非常に強い中坊がいると噂になっていた。
勿論、大和ではない。
そもそも大和は雪といるせいか高校生だと思われている節がある。
それはさておき、その噂される中坊が雪と大和の目の前に現れた。どうやら、最強と謳われる2人に喧嘩をふっかけたようだ。
結論から言うと、その中坊は呆気なく負けた。
というか、雪にボコボコにされた。
瞬殺だった。
「なんで、そんなに強いんですか!」
「お前が弱いだけだろ。」
「わた、お、俺、もっと強くなるから覚えてくだっ、おけよ‼︎」
ぶわぁぁぁと逃げていく中坊。
金髪に染めたよくいる不良だが、育ちの良さが滲み出ていた。
ふと、大和は気づいた。
「ああ、翼か。」
「知り合いか?」
「幼馴染だ。」
どうりで、どこかで聞いたことのある名前の筈だ。橘の次男か。
「あ?幼馴染なのになんでそんな他人行儀なんだよ。」
「1年くらい話してなかった。殆どもう他人だ。」
「お前、冷たいな。」
幼馴染と言っても、殆ど仲は良くなかった。萌斗がギリギリで繋いでいた絆は萌斗がいなくなった途端に崩壊した。
ただ、翼が大和に気付かなかったのは単純に目の前のことすら見えなくなってしまったからだろう。
「どうすんだ。幼馴染なんだろ?」
「ん…。」
幼馴染だ。
幼い頃は仲が良かった。
だが、翼は次男、大和は長男。
分かり合うことが出来なくなっていった。
「あいつはお子様だな。」
「お前もだろ。俺も含め、お前らもまだまだ世間に抗おうとする阿呆だ。だが、友人は大事にするべきじゃないか?今あいつをほっとくと、取り返しのつかないところまで行くぞ。」
「ああ。」
「いいのか。」
答えは決まってる。大和は仲間思いだ。道を外れそうになっている友人を放っとくほど薄情じゃない。
「あいつを探すか。」
「ふっ、素直じゃないな。」
ともだちにシェアしよう!