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その後⑤

屋上でふかしている大和を見て溜息をつく。 「それ、いいのか。」 何度も見たその光景に、何度も言った言葉。すでにその質問は意味を為さない。 「ふっ…。」 それを知ってか大和は鼻で笑った。 夏乃はゆっくりと大和の側に近寄る。 「もうすぐお前らも卒業か。」 「寂しいのか?」 「だれがっ…。」 否定的な言葉は飲み込んだ。素直にならないから進まなかった関係を思い出したのだ。 「お前は、どうすんだ。」 「どうもなにも進学だ。」 「勉強は?…そういや、お前らが受験勉強してるとこ見たことねぇな。」 「推薦で既に決まってる。」 「あっ、そう。」 まぁ生徒会だし。 この学園なら頷ける。 となれば翼も既に受かっているのか。 喜びもせず、それを言いふらすこともない2人。祝う言葉も出てこない。そもそも祝ったところでどうしようもない。苦労せずに受かったことは聞かなくても分かる。 「…なんで多々を入れたらダメなんだ?」 単刀直入。 取り繕ったように話を逸らしたところで意味はなかった。 ならばもう、そのまま聞くしかない。 夏乃の真っ直ぐな目線。 大和はその目を逸らすことなく見つめた。 そして、腕を引いて抱き寄せる。 「嫉妬だと言ったらどうする?」 耳元で呟かれる言葉にピクリと身体が跳ねる。 嫉妬だと? この男が? あり得ない。 「んなわけないだろ!」 夏乃は大和の肩を押すと、走って屋上から出て行った。残された大和は落ちていく灰を見ながら静かに息を吐いた。

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