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第67話
「集会はなんだったんだ。集会は生徒会全員でやるのが鉄則だっただろ。それに、俺はお前らが俺を辞めさせるってこの耳で聞いたんだよ‼︎」
そうだ、聞いたんだ。
あの時、たしかにこいつが、会長が、言ったんだ。
だというのに、何故、そんか顔をしてるんだ。お前が俺を辞めさせるって言ったのに…。
それでも、俺様男は淡々と告げる。
「辞めさせると言ったのは、集会をお前が仕切ると言うことだ。」
「で、でも、俺には庶務は務まらないって…。」
いや、待て。それを言ったのは誰だった?
___二階堂萌斗…?
「はっ、うそ、だろ…。なんだ、それ…。」
「集会の件は、萌斗が嘘をついていたようで。私達に言ったのです。
その…夏乃が最近庶務の仕事をきちんとしていなかったのを反省したと。それで代わりに集会を自分一人でするから許してくれと。
その時、私達は貴方が何らかの事情で仕事を出来なくて、責任感に苛まれそんな事を言ったのだと思っていました。
しかし、結果はあの通り。やはり一人で集会を作るのは無理だと思い、辞めさせようと言っていたのです。」
ああ、つまり、俺は二階堂萌斗の掌でいいように転がされていたのだ。俺は仕事をしていないように見せられていた…と。
ああ、バカじゃないか。
バカじゃないか。
くそっ…、なんなんだよ。
俺、何してんだよ。
くそっ…。ムカムカする。ムカムカする‼︎
「おいっ、夏乃‼︎」
多々の呼ぶ声を無視して走り出す。ただただ、無我夢中に部屋から飛び出した。
走って走って、それで、腕を掴まれた。振り返ると、そこには俺様男。息を切らす俺とは反対に目の前の男は悠々とそこに立っていた。
「はなせっ。」
「何をそんなに怒ってる。」
「怒ってなんかない…。」
「俺がお前に気づかなかったからか。」
「ちがうっ。」
「萌斗を信じたからか。」
「ちがうっ。」
「なら、お前はなぜイラついてる。」
「…なんでだよ、なんでなんだよ!!信じるも信じないも俺が!お前らを信じてなかった!!なんで誰もそれを言わないんだ。俺は可哀想な被害者だからか?違うだろ!!」
ああ、そうだ。
俺は自分を、自分自身に、怒っているんだ。
二階堂萌斗の罠に簡単にはまって、あいつらに裏切られたと勘違いして、勝手に恨んだ。阿呆は誰だ。
俺自身じゃないか。
「俺は、俺は…お前らに憧れたんだ。強くて、かっこよくて、何より…あったかかった。
だから裏切られたと思って、キレて、子供みたいに暴れた。
でも、それは本当に無意味なことで…。
くそっ…。くそっ‼︎」
視界が歪む。
悔しい。
悔しい。
俺はやっとみつけた居場所を自分から捨ててしまった。
勘違いして居心地のいい居場所を捨ててしまった。
零れ落ちる。
零れ落ちる…。
涙が…。
溢れた。
そして、
温かい体温が俺を包んだ。
「泣け。」
温かい声。久々に聞いた優しい声。零れ落ちた涙がシミになって広がっていく。
最近、俺は泣いてばかりだ。瀬野の言った通り、俺は弱くなったのかもしれない。
悔しいけど…、でも、この体温は嫌いじゃない。温かい体温に包まれながら俺は目を閉じた。
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