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第71話
昼休みーー
弁当を多々と真斗と共に食べていると、チャラ男が困り顔で尋ねてきた。その表情から見て生徒会の件ではなさそうだ。
「ごめんねぇ、お昼ご飯中に。あのね、萌斗が今日で最終日になるんだけど、帰る前に夏乃君に謝りたいって言ってるんだ。嫌ならいいんだけど、どおかな?」
「別にいいけど。」
「えっ、いいの?」
「行かなくていいなら行かねぇよ。」
「いやいや、来てきて〜。」
多々と真斗に断りを入れて、チャラ男について行く。案内されたのは小さな教室だった。その中に二階堂萌斗はいた。
忌まわしい彼は前とは違い少し痩せ、可愛いと言われる顔は疲れ切っていた。
「敬吾くん、外に出て行ってもらってもいいかな?大丈夫。ちゃんと謝るから。」
「それは、厳しいかな。いくら萌斗君のお願いでもね。」
「俺はべつにいいよ。こんなちっこいのに何かされても屁でもねぇし。」
「夏乃君がそういうなら一回出るけど…。何かあったら呼んでね。」
眉を寄せ、心配そうな顔をしながらもチャラ男は出て行った。それを確認して、二階堂萌斗は口を開いた。
「君のせいで僕の信頼は一気になくなったよ。」
「自業自得だろ。」
「そうだね、そうだよ。だから僕は留学期間を延ばされた。あんなに優しかった父さんに初めて怒られた。大好きな大和にももう会えない。僕の人生狂いっぱなしだ。」
痩せこけた顔は誰もが可哀想だと思うのだろう。だが、苦しそうに悔しそうにしていても、それでも自業自得で、同情もする気にはならない。
「俺はお前のせいで疑われた。不快な思いもした。」
「…なんで、みんな。みんな、こいつに。そこの位置には僕がいたのに。僕が築きあげた場所なのに…。全部全部奪って行った。お前が!!」
「本当にそう思うんだったら、お前はただあいつらを信用していなかっただけだろ。」
「え?」
「あいつらはお前を待ってた。帰ってくるのをずっとな。」
「嘘だ!!だって僕の居場所はもうなくなってた…。」
ああ、そうか。
こいつも俺と一緒か。
俺と一緒であいつらを信じられないで勝手に自滅した人間だ。
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