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第79話

翌日、知らない奴からメールが届いた。 迷惑メールだと消そうとしたが、ピタリとその指は止まった。 『夏乃君へ  今回は失敗したけど次は失敗しないから。 早く2人きりで愛し合おう。』 なんだこれ、なんだこれ。 全身から鳥肌が立った。 携帯を持つ手が震える。 誰からのメールだなんて考えなくとも分かる。 あいつだ。 瀬野だ。 「兄さん‼︎」 急いで兄さんに電話をする。 早く出ろ、 早く出ろ。 早く…。 『もしもし、夏乃か。』 「出た…。」 なんともない、いつもの声…。 良かった。 『夏乃?』 「いや、なんでもない。熊中さんは、いるのか?」 「熊中?ああ、護衛で付いてはいるが?」 「そっか。」 熊中さんはうちの家で一番の護衛だ。兄さんに何かする事は出来ないはず。 『熊中に何かようか。』 「いや…なんでもない。熊中さんの側から離れないように。」 兄さんが何かを言う前に電話を切った。 無駄に心配させられない。 でも、取り敢えず一安心。 そう思った束の間俺は顔を青くさせる。 「は?真斗、その腕どうしたんだよ。」 教室に入ると直ぐに、真斗がブーたれたようにそっぽを向いている姿があった。その腕には白い包帯が巻かれている。 「誰かに階段から突き落とされたらしい。 咄嗟に受け身取ったらしいからあんまし重傷じゃねぇんだけど、本人は突き落とされたのを察知できないし、犯人逃したしで落ち込んでんだよ。」 突き落とされた…? なんで…。 多々が説明している途中、今朝のメールが頭に過ぎった。 「まっ、日頃の恨みだろうし、大したことねぇだろ。」 「はっ、お前だって朝上から植木鉢ふってきてただろ。」 「多々にもなんかあったのか?」 「俺はこの通り無傷だよ。すんでのとこで避けたし。まぁ、誰が落としたのか分からなかったけど、きっと植木鉢滑らせて落としたのにパニクって逃げたんだろうけど。」 確かに、多々はいつも通り。 でも、こんな立て続けに不幸が起きるか? やっぱりあのメールが…。 「夏乃?どうしたんだ?」 「いや、生徒会行ってくる。」 「仕事か?」 「サボればいいだろ。」 「仕事残ってんの思い出したから。」 嘘だ。 あいつらが怪我してないか心配なんだ。 何か、いやな予感がする。

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