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第83話
どのくらい経ったのかわからない。
ただ、光の入ってこないこの部屋で唯一時の流れを感じられるのは、朝昼晩と出てくる飯の時間だった。
瀬野は1日に2回、多くて4回。この部屋に入ってくる。時間はバラバラだが、やる事はいつも一緒。
俺の身体を弄り回す。
ただそれだけ。
瀬野が来ない間はボーッと何もない部屋を眺めるか、目を瞑るか。
段々と思考が弱くなっていることが分かる。
訳もわからず叫びたくなる。
最近では瀬野が来ることに喜びを感じてきている自分が恐ろしくて仕方ない。
瀬野の与える快楽に段々と嵌っていく自分が気持ちが悪い。
もう、どうすればいいのかわからない。
瀬野は俺に何を求めているんだ。
どうすれば外に出られる。
「お食事の時間です。」
頭を抱え、布団の上で横たわっているといつもの給仕係がやってきた。側にあった机に抱えているお盆を置いて出て行こうとする。
それをつい、引き留めてしまった。
「…今日は何日だ。」
「申し訳ありません。お応えできません。」
冷たく突き放されたような言葉にひどく落ち込む。こんなメンタル弱いはずないのに、やっぱりおかしい。
「なんで…、こんな…。くそっ…。」
少し冷めた飯は喉を通らない。
半分も残して箸を置く。
こんなんじゃだめだと分かっていても、どうにも身体が言うことを聞かない。
「夏乃くん。ご飯残しているね。」
「瀬野…。」
いつの間にか現れた瀬野は俺の頬を撫でる。
「とても痩せてしまったね。悲しいよ。」
「さっさと俺をここから出せ。」
「威勢だけは変わらない夏乃くんが僕は好きだよ。でも駄目だね。もう少しだ。もう少しで君は光を失くす。」
「…仮に俺がお前の元に堕ちてどうするつもりだ。前に言ってただろ。お前は強い俺がいいんだって。今の俺は筋肉も体重も落ちた。喧嘩の感覚だって鈍ってる。ここに来る前よりも今の俺は弱いぞ。」
「そうだね。今の夏乃くんなら僕でも簡単に勝てるよ。でも、そうじゃない。
確かに無慈悲に喧嘩する君はとても魅力的だ。でも、あの男、巽大和に恋い焦がれている夏乃くんは見ていて不快でしかないよ。
それなら、僕の手で君を陥れて、僕だけのものにしてしまう方がよっぽどましだ。」
狂気だ。
狂ってやがる。
なんで、そんなに俺に拘るのか全く理解出来ない。
ただ、俺が一つ言えるのは、こいつは本気で俺をどうにかしようとしているってことだ。争いようがない…。
迫ってくる瀬野に俺はもう抵抗はできない。
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