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第84話
「夏乃くん、好きだよ。愛してる。誰よりも。」
堕ちていく。
堕ちていく。
流れるようにキスをする。
唇と唇があたるだけの生易しいキスではない。
舌と舌が絡み合い、お互いの唾液が行き来するような深いキス。
もう何度としたこの行為に対して何の感情も生まれない。なのに、どうしようもない快楽は襲ってくる。
感情なんて無に等しいのに、どうして…。
自分の体が言うことを聞かない。
「夏乃くん、今日もこっちしようか。」
「…っ。」
日に日に快楽が増す。
分からない。
分からない。
自分の身体が分からない。
ただ、そんな所で快楽を知ってはいけないのは知っている。
首を必死に横に振る。それでも、笑って瀬野は残酷なほどの快楽を俺に教えるのだ。
※
「やっと、柔らかくなってきたね。」
冷たい液体を肛門に塗られる。指の出入りが簡単に出来るほどそこは緩くなっている。
「それじゃあ、今日はこれ。入れてみようか。」
「なっ、それ…。」
「うん、ローターだね。」
ピンク色のそれは所謂玩具とかいうもの。それをどう使うのか。想像に容易い。
「やめろ、それ、は…。」
「大丈夫。今の夏乃くんには痛くないと思うよ。ほらっ、こうやってずっぷり。」
「ふうっ…。」
小さなローターが本来出す場所である穴に入ってくる。指を一緒に突っ込まれ、奥へ奥へと押しつけられる。
「やめっろ…。」
「そうだね、そろそろいいかな。」
「は?あ…あぁぁぁぁぁ。」
グルグル回る。
刺激が、今まで与えられたことのない場所で強い刺激が送られる。
「うぁぁぁぁぁ。やめ、ぁぁぁぁ。」
知らない
知らない
こんな刺激知らない
いらない
こんなの
知らなくていいのに
なんで俺がこんな、こんなめに…。
シーツを握りしめる。
唇を噛み締める。
涙を堪える。
「夏乃くん、イきたい?」
首を横にふる。
「そうか…それなら、仕方ないね。」
「へ?」
「僕、これから用があるから。また後でね。」
おいっ、まさか。まさか…。
「待て、待って。頼むからこれ取って…。」
「イきたくないならイきたくなるまでそのままでいればいいよ。」
「あ、ぁぁぁ。」
繋がれた右手が瀬野に届くことはなかった。
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