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第85話

西山side 瀬野さんが一ノ瀬を監禁している部屋から出てきた。 部屋は完全防音。 何をしているのか分からない。 まぁ、知りたくもないが。 瀬野さんは大そう一ノ瀬を気に入っているようだ。随分と最近は機嫌がいい。 「どうだった、巽大和の様子は。」 「巽大和は相変わらず警備が厳しいっすね。他の奴らも何かに感づいているのか、なかなか隙を見せない。」 「そう、巽大和は絶対に殺したいけど、まぁ、仕方ないか。」 「それと、一ノ瀬吹雪に動きが。」 「夏乃くんを探し始めた?」 「はい。流石にこんだけ家に帰ってこなければ心配になるでしょう。」 「そっか。先に一ノ瀬吹雪をやろうかなぁ。夏乃くん、お兄さんに危害加えられたって知ったらどうなるのかなぁ。」 どうなるも何も一ノ瀬に言う前に瀬野の家が取り壊される。 巽大和の家もヤバイが一ノ瀬の家も相当だ。表舞台のトップに喧嘩を売ってしまえば、いくら瀬野家でも潰される。 しかし、瀬野さんはそんなことどうでもいいのだろう。頭がイカれていやがる。 だがそんな瀬野さんを組の奴らは出来る限り手を貸そうとする。その理由はついこの前まで組を継ぐつもりはないと断言していた瀬野さんがやる気を出したからだ。 組長も組の連中もそして俺も、瀬野さんが恐ろしく頭が切れることを知っている。瀬野さんを組に入れたら瀬野は"瀬戸"よりもでけぇ組になれる。 今の瀬野では無理だが瀬野さんが頭を張れば裏も表もトップにだってなれる。 だから俺たちは瀬野さんについていかなければならない。 今のままではどちらにせよ瀬野は潰れるだけだから。 「瀬野さん、どこに行くんすか?」 「うん?あぁ、準備を早めに進めようかと思っていてね。」 「準備?」 「夏乃くんをずっと日本に留めておくわけにはいかないでしょ。まずは上海に連れて行って、その後はそうだなぁ…ヨーロッパまで行こうかなぁ。」 「瀬野の家はどうするんすか?」 「安心してよ、きちんと働くから。」 蛇のような鋭い眼に睨まれて背筋が凍る。これは俺が組長に見張るように言われているのバレてるな。 たらりと流れる汗。 だが、瀬野さんはにこりと笑った。 「西山くんを僕は信じているからね。簡単には殺さないさ。君は有能だし。じゃあ、僕は行くね。夏乃くんの見張り、よろしく。」 瀬野さんの背後姿が消えるのを見て、ホッとその場に腰を下ろす。 本当に、あの人さえいれば瀬野の未来は安泰だな。そんな男に目をつけられた一ノ瀬には逆に同情に値する。まぁ、俺には関係ないが。 携帯を持って一ノ瀬吹雪の対策を下の奴らに伝える。情報操作もそろそろ限界だ。 潰すか、弱みを握るか。 携帯を握りしめて考えていると、バイブが鳴った。 一通のメール。 その内容を確認し、すぐに瀬野さんに電話をした。これは、一ノ瀬吹雪だけに時間を割いている暇はなくなりそうだ。 西山side end

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