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第97話

「なら、黙って夏乃が帰ってくるのを待ってろって言うのか。」 「んなこと言ってねぇだろ。今、瀬野に手ェ出せんのは警察でも表社会にいる俺らでもねぇ。同じ裏張ってる奴らだけだ。」 「裏の奴…。だが、そう簡単に裏のそれも瀬野と同等の奴らに協力は仰ぐなんて不可能だ。」 裏の奴か…。きっと会長はあいつのこと言ってんだろうな。 「吹雪さん、いますよ。真斗…ですよね?瀬戸なら瀬野と同格、むしろ上だって言える。」 「瀬戸真斗…夏乃の友達か。」 「今ここにいないってことは瀬戸真斗は実家にいるんじゃねぇか?」 真斗のやつ。 あの時すでに感づいていたのか。 「おいっ、瀬戸真斗に連絡を入れろ。瀬野に喧嘩うるんだ。ただじゃ済まないだろう。もしも抗争になるんだったら、巽が介入して警察官どもは黙らせてやる。今後の保証もしてやるってな。」 「一ノ瀬もだ。出来る限り協力はする。だから、力を貸してほしいと伝えてほしい。」 きっと真斗なら瀬戸を動かせるだろう。その覚悟も真斗はもう持ってるだろうな。 「電話してきます。」 何コール目。 意外とすぐに繋がった電話から真斗のなんだよと不満垂れる声が聞こえた。 「お前、家か。」 『ああ、瀬戸はいつでも動けるぞ。』 「なんて説得したんだ。」 『瀬戸を継ぐ門出として、瀬野を潰したいって言っただけだ。』 「いいのか?夏乃なんかのために、お前は変えられたかもしれない将来を決めるはめになるんだぞ。」 『夏乃なんかのためにお前だって走り回ってただろ?俺もお前も夏乃なんかに助けられちまったのが運の尽きだ。』 「…ちげぇねぇ。」 そうだ。夏乃なんかと、あの強がりで仲間思いの馬鹿なんかと一緒にいたせいで何度痛い思いをしたことか。 「会長と吹雪さんが瀬戸のバックアップするってよ。」 『親父に伝えとく。』 「細かい話はまた後だ。まぁ、夏乃の居場所を掴んでからだろうけど。」 『ああ。分かった。』 じゃあ、そう言って電話を切った。 病院の屋上。 やけに静かなそこで空を見つめた。 夏乃、すぐに探しに行くからな。んで、俺らを庇ったこと絶対に後悔するくらい殴り飛ばしてやるから。

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