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第98話
数日後、夏乃の居場所が判明した。
それは真斗からの情報だった。
話し合いの場として設けられたのは瀬戸家。古きを重んじる御家で裏稼業に徹してきた瀬戸本家だった。
指定をしたのは真斗の父。
本家当主 瀬戸真教。
目の前に座るthe漢の姿に冷や汗が溢れる。流石の貫禄。
だが、一緒に来ていた吹雪さんも副会長も涼しげな顔をしている。
化け物め。
「それで、夏乃の居場所を掴んだのは本当ですか。」
まず重たい空気の中で言葉を発したのは副会長。
今まで夏乃の居場所を全くといって探し出せなかった身として、何故見つけられたのかも疑問に残る。
「瀬野本家またはその離れだそうだ。」
そう答えたのは真斗。
当主本人からの説明でなくて、ホッと息を漏らした。
これで説明が聞きやすい。肩の荷を下ろして、目の前にいる真斗に目を向けた。
「どうやって見つけたのですか。監視カメラを駆使しましたが、我々は全くと言って手掛かりを掴めませんでしたよ。」
「見つけたってわけじゃねぇ。うちのもんが瀬野の人間に聞いたらしいんだ。」
「何故瀬野の人間が…。」
「瀬野雅治について行けねぇもんがいんだよ。あいつは確かに有能らしいが組のことをなんも考えていない。離れていく奴がいてもおかしくない。」
瀬野は夏乃を捕らえる為に動いていた。組は利用できるから使う。
そんな感じだったしな。
まぁ、瀬野の人間に嫌われるのも頷ける。
「んで、俺らは何をすればいいんだ。」
「一般人を連れて行くつもりはねぇ。」
「は?」
それを言ったのは真斗じゃない。
本家当主の瀬戸真教の方。
どういうつもりだと、吹雪さんは瀬戸真教に睨みつける。
「どうもこうもねぇ。こちとら抗争しようってんだ。ドンパチしてる中、おめぇら連れてけねぇって言ってんだ。」
「んな…。」
まさか、こんなところで止められるとは。
いくら悪さしてようと本業に比べれば素人であまちゃん同然。一般人が巻き込まれたとでも報道されたらたまったもんじゃない。
そりゃあそうだ。
だからって、俺らは指くわえて夏乃が帰ってくるのを待ってろって言うのか。
グッと拳を握りしめる。
そんなの出来るはずがない。
悔しく唇を噛み締めていると、急に吹雪さんが立ち上がった。
瀬戸真教の方へゆっくりと歩みを進める吹雪さん。まさか、殴るつもりじゃ…。
それはいくらなんでもまずい。
吹雪さんを呼び止めようと手を出したその瞬間、吹雪さんはばっと頭を下げた。
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